みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです。
先日大阪の金融街、北浜にある証券バーBarFPOで投資家の懇親会があり参加しました。
店内にはモニターがあり、世界の株式市場や外国為替市場の動き、ニュースなどをリアルタムで見ながら、株価や為替、仮想通貨などの値動きやチャートを酒の肴にして盛り上がるという面白い場所でした。
でも、もっと面白かったのは、そこに来ていた人々です。
私は世界に幅広く分散投資して、市場の平均を狙うインデックス投資家ですが、懇親会の参加者の多くは個別株やFX、商品取引などハイリスクな取引をする人たちでした。
同窓会と同じで、こういう会に参加するということは、その手法の投資で成功されているということでしょう。
素晴らしいと思いましたが、同時に定年退職者に向いた投資手法とは何かを考えるきっかけになりました。
結論を先に言えば、定年後のおすすめ資産運用手法は、種を蒔いて時間をかけて待つ農耕民族型投資です。
+++もくじ+++
1.定年後も投資は必要
そもそも定年退職後も資産運用は必要なんでしょうか。。私の答えはYesです。
定年後の人生は長く、今後の人生ではインフレに備える必要があり、そのためには最低限の資産運用をする必要があります。
今まで日本はデフレと言われてきました。
とはいえ、コロナ禍で日本のみならず各国が財政出動を大幅に増やしていることで、今後は徐々にインフレになると見込まれます。
大幅インフレになるかどうかはともかく、現状の低い物価上昇でも複利の力で長期には大きな影響力を持ちます。
いま銀行に預金してもほとんど利息はつきません。定期預金で0.01%なのでほとんど誤差ですね。
説明を簡単にするため、物価上昇率1%、定期預金利息を、0%と仮定して考えましょう。
退職金など1,000万円もらった方が、1年間定期預金をしておいておくと1年後には、額面ではほんの僅かに定期預金利息の分だけ増えるとはいえ、実際のお金の価値は1%だけ下がります。
退職金時の1000万円が、1年で 1000万円×99%=990万円(実質額)と目減りします。
誤解のないように言いますが、額面じゃないですよ。お金の購買力、どれだけ物を買えるかの力が1%減ってしまいます。
ご理解いただけてるでしょうか。
怖いのはここからで、利が利を生む複利の力は物価上昇でもマイナスの大きな力になります。
2年目は、990万円×99%=980.1万円
3年目は、980.1万円×99%=970.3万円 と延々と計算を続けますと、
なんと、30年後には銀行に預けていた退職金が、約740万円にまで減ってしまいます。
60歳で退職して、90歳まで生きるのは珍しくありません。
銀行の定期に頼り投資をしないことが不都合であることは、ご理解いただけたでしょうか。
2.アクティブVSパッシブ投資
投資手法をざっくり2つに分けると、アクティブ型とパッシブ型に別れます。
アクティブ型は個別株などの銘柄を選択して市場平均を上回ることを目指して運用を行います。
みなさんが最初に「株を始める」「投資する」と言った際に思い浮かぶ投資手法です。
一方、パッシブ型は、機械的に日経平均などの指数と連動するように運用します。
指数は、構成銘柄の平均値となりますので、パッシブ型の投資成績は市場の平均となります。
平均というと、たいしたことがないように思いますがそうではありません。
株式市場の平均というのは長期的にはプラスになっているという重要な事実があります。
また、投資信託などでアクティブとパッシブの比較が盛んにされていますが 、手数料の高さなどがあって、アクティブがパッシブ投資を上回るというのは非常に難しい、ということが、これまでの実証分析で分かっています。
3.アクティブでいくなら十分な準備を
株式市場というのは、素人とプロが同じ条件で戦う異業種格闘技のような場です。
MBAを持つプロはもちろん、最近ではAIで武装したロボットが跋扈する世界で、生半可な知識で参入するのは控えるべきです。
しかしながら、冒頭の懇親会でご紹介したように、個人投資家でもしっかり成果を上げている人がいるのも確かです。
成果を上げている人に共通しているのは、単なる運ではなく、しっかりと勉強をしていることです。
本ブログでも紹介しているファイナンシャルアカデミーがやってる株式投資の学校 など、本格的に勉強する場があちこちに用意されています。
個人投資家でしっかりと成果をあげようとするならば、まかり間違っても勘を頼りに個別株を購入するとか、日経新聞を読んだだけでこれが上がりそうだからといって購入をするといった行動をしてはいけません。
少なくともしっかりとした準備をしていれば、大負けして株式市場から退場するようなことはないので、十分な準備をしてから戦いましょう。
4.株価は長期的には上がる
株式投資の魅力は、長期的には国債などを上回る価格上昇をすることです。
ニュースを見ていればわかるように、株式市場というのは短期的には上がったり下がったりするのが日常的です。
時には今年の初めのように、新型コロナウィルスだとか、武力衝突だといった大きな要因が出て、大暴落をすることすらあります。
しかしながら、時間を長く取って 考えると平均的には株式というのは値上がりをしています。
これは考えればわかるように、株式すなわち企業の価値ですから、企業というのは毎日毎日利益を上げるために活動をしています。
その利益が株式という形になって、個人に帰ってくるのです。
株式投資というのは、企業活動にお金を預けてその分け前をもらうものなのです。
定年退職後のリスクの低い資産運用とは、株式市場が長期的に上昇することを期待して株を持っておこうというものです。
例を挙げれば私たちの年金積立金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がそれを実行して成果を上げています。
短期的に赤字を出した時に「私たちの年金が失われる」などと言って批判されることのあるかわいそうな法人ですが、実際に公表されている運用成果は違います。
2001年度以降の年平均で2.97%の利益を着実にあげ続け、私たちの年金に対する安心感を増す一助となってくれています。
5.長期分散投資の威力
GPIFがそれだけの成果を挙げられているのは、他でもない長期分散投資をしているからです。
分散には銘柄・地域や時間分散など様々ありますが、インデックスファンドを買うことで簡単に実現可能です。
出典:金融庁
長い期間を視野に持つ年金運用などでは普通のことですが、基本的なポートフォリオを決め長期にわたり運用を続けるのが、成果につながっています。
GPIFの基本ポートフォリオ
出典
個別株の短期的な値上がりを狙うのが、いわば狩猟民族型とすれば、長期分散投資は種を撒いて収穫を待つ農耕民族型です。
6.定年後のおすすめ投資法
定年後は、時間に余裕はあるとはいえ、モニターにかじりついてドキドキするのは得策ではありません。
退職金はじめこれまでの資産をインフレから守る程度の、守りの投資運用、いわば農耕民族型投資で臨むのがおすすめです。
その際に注意すべきはリスクを取りすぎないこと、広く分散すること、そして定期的にリバランスすることです。
詳しくはこちら>>ファイナンシャルプランナーが教えるお金10回講座
まとめ
定年退職後の資産運用について考えてみました。
現在では、楽天証券 やSBI証券 など、煩わしい勧誘のないネット証券で、世界中に分散投資できるインデックスファンドが簡単に買える時代です。
定年退職世代には、もはや狩猟型の投資は似合いません。
年金積立金の運用同様に、種を蒔いて時間をかけて待つ農耕民族型投資をしてみたらいかがでしょうか。