【一部追記】インデックスファンドの元祖、バンガードからタイムリーな情報が出たので追記しました。
みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです。
定年退職のあと退職金を元手に、初めて株式投資を始めた人が直面するのが毎日の株価に一喜一憂する毎日です。
株を安く買って高く売れば儲かるのが株式相場ですが、そのタイミングを事前に知ることはできません。
そんな中でも、落ち着いていられるのは低コストの投資信託などを使って、世界に幅広く分散投資し、市場の平均的な成果を狙うインデックス投資家です。
なぜ、わたしが定年退職者の資産運用にインデックス投資投資をすすめるのか解説してみました。
+++もくじ+++
1.相場は誰にもわからない
株を安く買って、高く売って儲けようと多くに人は株式投資に参入します。
しかし株式市場は、初心者からプロまでが同時に同じ土俵で戦う厳しいところで、なかなか売買のタイミングを掴むのは至難の業です。
株式市場が下落すると、その下落がずっと続くと考えます。
上昇すると底値を逃した気がして、今度は株価が高すぎると感じることもあるでしょう。
昨年の株式市場は非常に好調でしたが、いずれ修正局面が訪れます。
新型肺炎、米国大統領選挙、英国のEU離脱など心配の種は尽きず、市場は予測不可能です。
現役時代から、長く資産運用をしている方には常識ですが、最近になって株式投資を始めた方には日々の資産額の変動は耐えられないストレスになります。
その点、インデックス投資は個別の株価や企業業績に関係なく、市場全体の平均を実現するものでプロとしのぎを削らなくても、素人が平均的成果を簡単に実現できるすぐれた仕組みです。
もちろんインデック投資の手段である投資信託なども、日々の価格変動はありますが、過去の経験則から長期的には右肩上がりという安心感があります。
2.長期で見ると成長してきた株式市場
短期で見ると明日株価が上がるか下がるかは予測し難いのですが、長期で見るとこれまでずっと株価は上がってきました。
考えてみるとそれも当然で、株価があらわす企業の価値は、日々の企業活動の成果であり、会社経営は儲けるためにやっているわけですから、資本主義が続く限り平均的には会社が儲かり、それを反映した株価が上がるのは当然です。
実際、私たちの年金の積立金を市場で運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)では、株式や債券などの資産を長期にわたって持ち続ける「長期運用」によって、安定的な収益を得ることを目指して運用をしています。
時期によっては損失が出ることもありますが、2001年度~2019年度第2四半期の長期では、年率+3.02%と定期預金などとは比べ物にならない好成績を残しています。
1969年末に「国内債券」「国内株式」「外国債券」「外国株式」にそれぞれ100万円を投資して保有し続けた場合、2018年末にいくらになったかを示しているのが、下のグラフです。
出典:GPIF
3.インデックス投資の肝
インデックス投資は、TOPIX・S&P500・ダウ平均のような株価指数(インデックス)と同じ値動きを目指す投資方法です。
目標にする指数(ベンチマーク)に違いはありますが、考え方は共通です。
(1)重要なのは分散投資
不確実な株式市場への備えとして、重要なのは分散投資です。
一つのかごに、すべての卵をのせるなというたとえ話がありますが、資産運用も同じです。
すべての資金をひとつの金融商品に集中させると、市況が悪く運用がうまくいかなかった場合にはマイナスの影響が資産全体に及びます。
しかし、値動きの異なる複数の資産に分散させれば、リスクを分散しつつ安定的な収益を期待することができます。
具体的には、国内外の国や地域への分散、株式や債券など商品クラスの分散、円やドルなどの通貨分散、ドルコスト平均法などの時間分散などの考え方があります。
考え方としては以前からありましたが、手軽に低コスト投資信託などで実現できるようになったのは最近のことです。
インデック投資のための金融商品はたくさんありますが、長期の積立・分散投資に適したと金融庁が認めたつみたてNISAの対象商品や「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019」などで選ばれた、全世界に分散投資する商品を選べば大外れはないでしょう。
(2)資産運用におけるリスク
株式などの資産運用には、リスクがあります。
通常は、リスク=危ないこという理解ですが、資産運用の世界でのリスクとは、「数字のばらつきの大きさを表すもの」で平均の上にも下にもどの程度ばらつくかを示します。
つまり「危ない」側だけでなく「儲かる」側にもどの程度ばらつくか、価格の振れ幅の指標です。
資産運用に関しては過去から株価などの膨大なデータが有り、このデータと統計学の知識から どの投資対象がどの程度リスクがあるか、あるいはリターン=収益が期待できるかが計算できます。
投資対象となる株式等の銘柄、投資する地域、投資する通貨には様々なものがありますが、それぞれが常に同じ値動きをするわけではありません。
例えば株式と債券とでは、景気動向に応じて異なる値動きをすることが多いと言われています。
こうした資産や銘柄の間での値動きの違いに着目して、異なる値動きをする資産や銘柄を組み合わせて投資を行うのが分散投資です。
分散投資をすることで、期待されるリターンそのままに、リスクを下げることができるのです。
(3)そもそもリスクを取りすぎないこと
株など値動きのあるものに投資する時は、リスクを取りすぎないことが肝心です。
リスクを取れる範囲のことは、法則があるわけではありませんが、株などのリスク資産の部分が半減しても、メンタルがやられない程度が目安だと思います。
一般的には、年齢とともにリスクを取れる範囲である「全資産に占めるリスク資産の割合」は下がると言われています。
「100-年齢の比率で株などリスク資産を持つ」という考え方も広く知られており、62歳の私の場合もこれに習い、全資産の4割をETFや投資信託などリスク資産に投じています。
仮にリスク資産部分が半額になったとしても資産全体で言えば2割減にとどまるとの計算です。
人生はいろいろな浮き沈みがあることを考えれば、資産の2割が既存してもなんとかメンタルは耐えられるのかなと考えています。
(4)コストにも敏感になろう
投資によりどれだけのリターンがあるのかを事前に知ることはできません。
しかし、確実にリターンを下げるコストについては事前に知ることができます。
コストは、購入する金融商品の種類だけでなく購入窓口によっても異なるため、賢く選択することが重要です。
5G、自動運転など時流に合わせたテーマ型投資信託や、毎月分配金を年金代わりに受け取れる投資信託などは、証券会社の売れ筋ですが、コストが高く不適切な商品です。
主なコストである信託報酬等を確認し、年間0.5%を超えるものは検討する価値すらありません。
最近の世界に分散できる投資信託では、年間0.1%程度のものも増えてきました。
一例を上げると、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019」の投票で第1位となった投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、新興国を含む世界中に分散投資ができて、信託報酬はわずか0.1%程度と非常にリーズナブルです。
もちろん最近は、楽天証券 やSBI証券と言ったネット証券で買えば、購入時の手数料はゼロです。
参考記事>>資産運用を行う金融機関はネット証券会社で決まり
(5)長期投資では複利の力も重要
また、長期投資には運用で得られた利益をさらに運用して増えていく「複利」の効果があります。
そして投資期間が長いほど、複利効果も大きくなります。
定年後も人生は長いです、長期に渡りインデックス投資で資産運用しつつ必要な資金を取崩して生活するのが、豊かな定年後ライフのために重要です。
出典:金融庁
4.株が下がったときこそ正念場
株が下がった時、なんとか退場せずに資産運用を続けることが重要です。
耐えるために重要なのは資本主義の健全な発展を信じることです。
相場は様々な要因で上下しますが、会社の経営内容がそんなジェットコースターのように変わるわけではありません。
資本主義が続く限り、会社は利益を出そうと毎日のビジネスを続け、企業活動の積み重ねが長期的には株価に反映していきます。
適切なリスク量でインデックス投資をしているなら、相場が暴落したとしても我慢して次の反騰を待ちましょう。
あせって売却してしまうと、損が確定し資産運用からの退場となります。
「稲妻の輝くのは一瞬」という言葉がありますが、低迷した相場が回復するときは急激です。
インデックス投資の名著であるチャールズ・エリスの「敗者のゲーム」にはつぎのような説明があります。
過去109年間(3万9812日)で、ベスト10日を逃しただけで、この間の利益の3分の2を失うという
長期的に見て投資家が失敗する原因の一つは、激しい下げ相場に遭遇してパニックに陥り、上記のような最大の上げ相場に参加する機会を自ら放棄してしまうことだ。
この教訓は明らかである。投資家は、「稲妻が輝く瞬間」に市場に居合わせなければならないということだ。
また、インデックスファンドの元祖、バンガードからは
投資に関して見失いがちなもう一つの事実は、弱気相場には終わりが来るということ、そしてチャートが示すように、弱気相場を耐え忍んだ投資家は、その忍耐強さが報われてきたということです。
という心強いメッセージが発信されています。
資産の市場価値が20%以上下落すれば、誰でも自信が揺らぐものです。しかし、衝動的に損失を避けたり、利益を得ようとポートフォリオを入れ替えたりすることは、長期的な運用実績を低下させる可能性があります。市場が不確実な局面でも、運用方針を見失わないことが大切です。https://t.co/oErvvMHOMV
— バンガード・インベストメンツ・ジャパン (@vanguardjapan) March 10, 2020
5.まとめ
昨今の状況を見るに、資産運用をためらう人が出るのは当然でしょう。
そんな中でも本格的な知識や、調査にかける時間がなくとも手軽に始められ、投資したあとは放置しても利益を生んでくれる、ほったらかし投資の手段がインデックス投資です。
とはいえ、退職金が入ったからと言ってすぐに資産運用を始めるのは、実は賢明ではありません。
ファイナンシャルアカデミー などで本格的に勉強するのもいいですが、まずは第一歩として気軽に読める良質の投資本を読むのはいかがでしょうか。
梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーというブログを主催されている、水瀬ケンイチさんの「お金は寝かせて増やしなさい」は暴落を生き延びた経験も書かれたおすすめ本です。
あるいは、資産運用のおかげでセミリタイヤできた経験もあるNightWalkerさんの「世界一ラクなお金の増やし方 #インデックス投資はじめました」は、定年退職世代に通じるものがあり共感できる良書です。
相場変動に焦ることもなく、長期的には安定的な収益が期待できるインデックス投資は定年退職世代にこそオススメです。