みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです
日本人の投資嫌いは筋金入りのようです。
2016年に金融庁が行ったアンケートによれば、株式や投資信託など有価証券保有経験は全体の3割強に留まっています。
しかし「退職金はリスク取りたくないのでぜんぶ銀行預金です」というのは、実はもっともハイリスクです。
なぜなら、じわじわ実質価値が減少していく物価上昇についていけないこと、国の膨大な借金を背景にしたハイパーインフレ対策が全くできていないこと、最近の厳しい銀行経営を背景として銀行が潰れるリスクを考えていないことです。
これについて、わかりやすく解説します。
+++もくじ+++
- 物価が上昇すると資産価値は目減り
- 金融資産の大半は60歳以上が所有
- 日米高齢者の資産格差とその理由
- ハイパーインフレの懸念
- 銀行経営破綻に対する不安
- 投資のイメージを前向きに
- GPIF並みでも、貯金とは大差
- まとめ
物価が上昇すると資産価値は目減り
日本で「貯蓄から投資」へという掛け声がかけられ初めて長いんですが、実際のところ日本では投資は流行っていないようです。
金融庁の資料によれば、家計金融資産(約1,700兆円)の52%(約900兆円)が現預金です。
いま銀行の定期預金に預けていても利息は年0.01%程度。事実上のゼロ金利です。
一方、物価上昇は日銀の目標の2%には届かないとはいえ年率1%程度はあります。
すなわち、額面での価値は変わらないとはいえあなたの1000万円は、来年になれば990万円分の価値しかなくなります。
あなたが今後亡くなるまでの期間を仮に30年とすると、このまま銀行においておくと1000万円は30年で730万円程度の価値になってしまいます。
定年退職世代の投資ではお金を増やすより、年2-3%程度のリータンを目指す低リスク投資をして、お金を目減りさせないことを目標にすれば、じわじわ進む物価上昇に負けずにすみます。
金融資産の大半は60歳以上が所有
日本には、サラリーマンに退職金の制度があるからでしょうか、金融資産の大半を60歳以上が所有しています。
出典:平成30年版高齢社会白書
特に驚くべきは70歳以上の世代が持っている資産で、全体の30.9%に及びます。
しかも平成元年では9.0%だったのが30.9%になっているということで、シニア世代がお金を溜め込むだけで有効に使っていない証拠です。
投資にリスクが有ることは事実ですが、適切な投資活動をすることで、物価上昇に負けない安心定年後ライフが送れます。
日米高齢者の資産格差とその理由
高齢者がお金を持つのは、日本固有のことではありませんが、問題は日本の高齢者の資産が、適切な投資活動をしないことから増加せず、たとえばアメリカなどと比較して見劣りすることです。
金融庁の資料によれば、米国では退職口座・投資信託を中心として、退職後も含め現役時代から資産形成を継続し、退職世代等の金融資産は過去20年で約3倍に増加している。
一方で、日本の家計の金融資産は過去20年間伸びておらず、直近では退職世代等の保有する世帯当たりの金融資産は米国の半分以下とのこと。
もちろん失われた20年 という経済全体の問題もありますが、日本では銀行預金ばかりをしているのに対し、アメリカの場合は株式などの投資が広く行われているということが大きな要因です。
ハイパーインフレの懸念
日本では長らく低金利が続いてむしろデフレの方が心配な状況が続きました。
したがってほとんどの人はインフレに対する対策というのは考えていないようですがむしろこれからはインフレを考えないといけません。
とりわけ退職金はこれからあなたが亡くなるまで(実際は何年かわかりませんが)少なくとも30年程度活用することを考えないといけません。
その際考えないといけないのは名目の価値ではなくてインフレ調整後の実質的な価値です。
いま1000円で買えるものが、10年後も1000円で買えればインフレのことは考えなくていいのですが、インフレになると今1000円で買えるものが10万円になるかもしれません。
「そんなバカな」と思うかもしれませんが、世界的にみればこんなことはよくあります。
たとえば現在ベネズエラでは、そんな状態が進んでます。
これからあなたが亡くなるまでの間に、そんなことは起きないと信じ切ってしまう方が心配でしょう。
日本の財政の悪化状況を考えると、今後30年程度のスパンではハイパーインフレが起こることも考えないといけません。www.teinen-wakuwaku.comハイパーインフレ対策としては、外貨資産を持つことですが普段から世界の株式に分散投資する投資信託などで資産運用したり、ある程度インフレに追従する10年物個人向け国債などで運用することで対応できます。
銀行経営破綻に対する不安
銀行に預けたお金は1000万円まで保護されているのはご存知の通りですが、現在地方銀行を中心に銀行経営に対する不安が囁かれています。
銀行が倒産してしまえば、1000万円までの保証はあるにしろ銀行に大きく依存したあなたの生活が一変するのは間違いありません。
もちろん日常の資金は災害のことも考えて銀行に一定額の貯金を置いておくのは重要ですが、すべてをそうする必要はありません。
一部は証券会社などに分散した方が安全でしょう。
投資のイメージを前向きに
そもそも銀行預金が大好きな人達にとって、投資のイメージは悪いようです。
投資というと投資金額が1年で2倍になるとかいうような、トンデモ本が本屋に並んでることもあり、投資と投機。ギャンブルの違いがよくわかっていないようです。
カジノを含むIR 法案が国会で成立しましたが、銀行預金愛好家にとってはギャンブルもパチンコも投資も大差ないようなイメージで捉えられています。
日本はパチンコ大国なのでギャンブル好きの国民性かもしれませんが、それもあって投資は逆にイメージが悪いようです。
他の国では子供の頃からお金に対する教育をするというのはごく普通です。
日本でもそろそろ投資に対するイメージを変えないと、幸せな老後を送れなくなってきます。
GPIF並みでも、貯金とは大差
投資が嫌いな人は、あなたの大切な年金積立金の一部が株式等で運用されていることはご存じないかもしれません。
でも積立金を運用してるGPIFという国の機関が、コツコツと株式や債券の投資をしており、その運用成果はびっくりするほど 好成績です。
定期預金が大好きな人にも、あなたの大切な年金の一部がすでに株式市場で運用されていて決して怖いものでないことを知ってもらいたいものです。
日本では、子供の頃からお金を教育をしていないので、いざ退職金が入って投資するお金ができて投資の必要性を感じても、知識がない、怖いということで踏み切れない方も多いようです。
有価証券投資は必要だが、保有経験がない理由
https://www.fsa.go.jp/common/about/research/20161021-1/01.pdf
定年退職後の資産運用はそれほど大きく儲けることを考える必要はありません。
最初にあげたインフレリスクに負けない程度に運用すれば良いだけです。
資産運用は「お金を儲けるというよりも、大切な大切な退職金の価値を減らさない」という考え方でするのが正解です。
特に、定年退職後は年金を収入の柱にしつつも、資産を運用しながら取り崩すのが定石であることは覚えておいたほうが良いでしょう。
まとめ
退職金を全て銀行預金で置いておくというのは不適切であるを分かっていただけたでしょうか。
定年退職後の資産運用は、大きなリスクを取ってやる必要はありません。
GPIF のポートフォリオなどご参考に、インフレに負けない程度の低リスクでゆっくりとした運用をしましょう。
そして資産運用に時間をかけるよりは、まだまだ元気なあいだにアクティブな定年退職ライフを過ごしていただきたいものです。