みなさんこんにちわ
安井宏@定年退職FPです。
藤野英人さんの著書「さらば、GG資本主義~投資家が日本の未来を信じている理由~ (光文社新書)」という本を読みました。
著者の藤野さんはレオス・キャピタルワークスという会社の社長ですが、若い世代を中心に人気のある「ひふみ投信」という投資信託の会社の社長と言った方が分かりやすいと思います。
さて、GG資本主義ですが、定年退職世代の人たちにとっては、GGが何を意味するかは言うまでもないでしょう(笑)
この本の主張は、高齢化社会が、財政だけではなく日本の会社や経済において幅広く色んな部分で「みんなの成長」の邪魔をしているということです。
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名付けてGG 資本主義
上の世代がいつまで経っても重要ポストに居座り、企業をはじめあらゆる場所で新陳代謝が起きにくくなっている。その結果、若い人たちが力を発揮する場所が一向に増えず、社会に新しい価値観が根付かない。時代が変化しつつあるのに、旧来型の発想から抜け出せず、成長の芽が摘まれてしまうーー。
私はこの社会現象を「GG 資本主義」と名付けました。
出典:さらば、GG資本主義~投資家が日本の未来を信じている理由~ (光文社新書)」
ネーミングだけを見ると、今流行りの世代格差を象徴するように見えますが、本質はそこではないようです。
著者は決して高齢者を悪く言っているわけではなく、問題は GG 資本主義という「構造」であるとしています。
GG 資本主義によって成長が阻害されている現状が問題だと言っているわけです。
さらにこの現象は、会社のことだけではなくGG 資本主義の特徴である「リスクを取らないことを最優先する思想」が会社組織だけではなく日本の社会全体に蔓延していることを憂いています。
わたし自身、すでに定年退職世代なので耳の痛い話ですが、自分の周りを見回しても過剰なコンプライアンスやリスク回避の風潮は、やはり大きな問題だと思います。
社長が若い会社は高成長
この本は、ファンドマネージャーの著作らしく、感情論だけではなくデータを示し論を展開しています。
わたしが特に注目したのは、企業をいくつかに分ける中で、社長が若いほど成長がよく株価も上がっているという数値でした。
出典:さらば、GG資本主義~投資家が日本の未来を信じている理由~ (光文社新書)」
上場企業の社長の年齢別にグループ分けし3年間の株価のパフォーマンスと売上高の変化率を示した表では、はっきりと社長の年齢が若いほど株価が上がり売り上げも伸びていることを示しています。
著者は、日本企業でサラリーマンとして出世を重ね還暦を過ぎて「最高管理人」であった経営者が企業にダイナミックな成長を起こせないのは当然だと述べています。
別のデータでは、例えば日本企業の社長の平均年齢は近年上がり続けていて59.5歳になっていること、日本の会社の半分近くは還暦を過ぎた男性によって動かされていることを紹介。
さらに、消費についても存在感を放っているのも60歳以上だそうです。
日経新聞すら経団連を同質的と批判
本の内容から離れますが、日本経済新聞に「経団連、この恐るべき同質集団」というタイトルで、日本経団連の正副会長は、みんなサラリーマンで高齢、男性、日本人であることを揶揄したような珍しい記事が載ったことがありました。
まさにこの本で書いているようなGG資本主義の蔓延を、あの日経新聞ですら憂いているということでしょう。
失われた20年の分析
この本では失われた20年の後半の株価指数の推移をもとに日本を代表する銘柄数 TOPIX Core 30などが全然成長してないことを指摘しています。
つまり90年代以降業績を上げずに景気の足を引っ張ってきたたのは大企業だということです。
著者はこの原因の一つに業績を報じるメディアと情報を受け取る側の両方が大企業にばかり注目しているからということを言っています。
大学生の就職ランキングにまでそれが表れていることを問題視しています。
日本経済に現れた変化の目
そんな中でも日本経済には変化が現れてきていると言えるとして、伊藤レポートや金融庁の森長官について書いています。
詳細は本に譲りますが、そういった新しい芽が出てきてこれからの新しい展望が開けて来てるかもしれないという希望を与えてくれる本です。
とりわけ金融庁の積立NISAの動きについては高い評価をされています。
おわりに
GG資本主義をやめて、若い人に経営を譲れというだけだったらなかなか反発もあるでしょうが、しっかりと私達定年退職世代の側の役割についても書いてくれています。
それは若者を応援する「イケてるGG」になることです。
すなわち年長者には経験があるので、先を読んで若者にアドバイスすることを勧めているのです。
新しく何かをしようとする若者を、年長者が応援していくことを多世代共生社会の一つとしてとらえており、なかなか示唆に富む書物だと思いました。
じぶん自身、定年退職の歳になって思うのは、やはり若い世代の活躍をサポートする側に回らないといけないということです。
会社の第一線を退いた、年金をもらいながらも社会で生きていかないといけません。
そうした年金を支えるのは、今後の若い世代です。
それに何より、子供や孫の世代には私たち以上に豊かな社会を生きて欲しいと切に思います。
従って、そういう若い世代がのびのびと働けるように、そんな社会をつくるのも定年退職世代の責任だと改めて感じた一冊の本でした。