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【FACTFULNESS】GPIF損失の報道から考える、個人投資家のファクトフルな振る舞い方

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みなさんこんにちわ

安井宏@定年退職FPです。

公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、世界的な株価下落や円高などで14.8兆円という大きな損を出したとして、「GPIFの運用失敗で「老齢貧困社会」到来」などと、大騒ぎをしている人たちがいます。

投資の知識のある人なら容易に理解できるように、今回のことは想定の範囲内のことで、全く大騒ぎする必要はありません。

今回の騒ぎを反面教師に、賢い投資家になるにはどうすればいいか考えましょう。

その答えは、センセーショナルなニュースに反応しやすいなど人間の本能を理解し、事実(FACT)に基づいたファクトフルな行動ができるように、普段から心がけることです。

 

+++もくじ+++

 

GPIF騒ぎのニュースと事実

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は公的年金の保険料のうち、年金給付に充てられなかったものを年金積立金として運用し、年金財政の安定化に活用するため、その資金の管理と運用を行っています。

その運用成績はもちろん公開されており、今回の損失を含めても、平均収益率は年率+2.73%、累積収益額は+56.7兆円となっています。

本来、年金積立金の運用は長期的な視点で行うものであり、運用状況も四半期ごとでなく長期的に判断されるべきものです。

とはいえ、国民の大事なお金なので情報公開のため四半期ごとに運用成績を公表することは、評価されることはあっても非難されるようなことではありません。

現在150兆円もの資産を運用していることから、14兆円余りの今回の損失も収益率で見ればマイナス9.06%ということで、1割ほどが減ったということに過ぎません。

株式などの運用経験のある方からすれば、いつもの日常風景でしょう。

GPIFでは長期的な観点から、国内債券・国内株式・外国債券・外国株式という各資産を組み合わせた資産構成割合を「基本ポートフォリオ」として定め運用しています。

これがいわゆる分散投資であり、1年間だけでみるとリターンがマイナスになることがありますが、長期ではプラスの収益となっているのは前述のとおりです。

 

長期でこそ有効な分散投資

基本ポートフォリオは、国内・海外の株式などリスク資産を含みます。

リスク資産はその名の通り、価格が上がったり下がったりします。すなわち「投資対象にリスクがあるということ」はそもそもの前提です。

夏はいつまでも暑いのではなく、やがて秋になり冬になって雪が降るのと同様、資本主義の世の中では株価など資産価格は「上がることも下がることもある」というのはごくごく普通にあることです。

資産価格が上がった時は無視し、下がると大騒ぎするというのは、そもそも何かが間違っていると気が付きましょう。

そして市場の平均は、偉大な「平均回帰性」の力によって、これまで長期をならすと必ず成長し価格も上がってきたことを思い出してください。

言うまでもなく、その理由は世の中にたくさんある株式会社が、収益を上げようと日々頑張っていることです。

世界の景気がいい時も悪い時も、頑張っているその成果が長い目で見ると株主への還元、すなわち株式のプラスのリターンとなって戻ってきます。

一時的な暴落もありますが、時間が経てば平均に回帰するという、「平均回帰の力」を利用して運用を継続していくのが重要です。

GPIFは、これまでもそのことを広報してきましたが、残念ながら自分で投資をしている個人投資家などを除けば、十分には理解されていないと言うことでしょう。 

 

なぜ人間は間違った情報を信じるのか

ニュースの本質

今回大騒ぎしている人たち、これまでの56.7兆円の累積収益をどう考えるのでしょうか。

よく「犬が人間を噛んでもニュースにならないが、人間が犬を噛んだらニュースになる」といいますが、これは悪いニュースのほうが広まりやすいという、ニュースの本質を表しています。

投資などの分野では、人間が常に合理的な考えで行動するという伝統的な考え方ではなく、人間の心理的、感情的側面の現実に即して考える行動経済学の考え方が普及しつつあります。

とはいえ、人間は本能的に行動したりするので「人間はどのように行動するか」を知って、少しでも賢明な行動になるよう心がけることは個人投資家にとっても大切です。

本能に支配されるのが人間

今回のようなニュースに過剰に反応してしまうのは、人間の行動がそもそも本能に支配されているということを示しています。

人類の長い歴史の中で、時間をかけて合理的に判断ができるようになったのはつい最近のことです。

昔の人たちは草原の中で、いつ野生生物に襲われるかも分からないような生活をしていました。

とっさに本能で行動をするのはそんな人間が生き延びるのに役に立ちました。

しかし、現在のように様々な判断が合理的にされたり、人工知能などがそれを学習するようになった時代であれば「人間が本能に支配されていて、どのような行動をするか」ということを予め理解しておくことは重要です。

 

FACTFULNESS

人間がどうして本能に従い間違った認識をするかをわかりやすく解説したのが、世界的なベストセラー『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランドです。

マスコミの流すセンセーショナルなニュースではなく常にファクトに注目して、世界を見るというのは非常に難しいことです。

FACTFULNESSという本は、非常にわかりやすく人間心理やメディアのバイアスを解説しており、クイズや美しいグラフで世界をわかりやすく読み解いています。

例えば、

質問 世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?

 A   20%
 B   50%
 C   80%

 というようなクイズを出します。(注:クイズの正解はブログの最後にあります)

3択なのでチンパンジーでも33%正解するのに、

リンダウ・ノーベル賞受賞者会議というノーベル賞受賞者と研究者との交流の場が、(中略)それぞれの分野で名の知れた学者ばかりだったが、子供の予防接種についてのクイズは、それまでで最悪の正解率だった。

正解したのはわずか8%。

などという事実をあげ、むしろ賢い人ほど間違えることを示します。

その理由は「分断本能」「ネガティブ本能」「パターン化本能」「焦り本能」など10の本能が引き起こす思い込みにとらわれてしまっているからだとしている。

賢い人ほど、世界についてとんでもない勘違いをしているというのがこの本の主張です。

今回のようなニュースについても、以下のように書いています。

ニュースの見方を教えよう。本能に訴えかけようとするメディアの手口を見抜けるようになれば、悪いニュースを見ても不安になったり絶望したりしないですむ。

個人投資家が、本能に従い間違った判断をすれば大きな損失です。

すこし高い本ですが、オススメです。

 

まとめ

わたし自身、お金の専門家=ファイナンシャルプランナーであると同時に、定年退職者でもあります。

まわりの定年退職者を見るに、銀行に資産運用の相談に行くなど「なんでみすみす損をするような不合理な行動をするのか」という事例をよく目にします。

さらに直接見聞きしてはいませんが、ニュースなどでは「高い利回りに惹かれて未公開株に投資をしたら詐欺だった」「親切な銀行員にすすめられた高分配の投資信託を購入したら暴落し老後資金の多くを失った」などお金に関する怖い事例がたびたび報じられています。

「年金は破綻するから支払うのは損」などというのも同じです。

人間の行動は、そもそも本能のおかげで間違った思い込みなどが生じるものだということを「FACTFULNESS」の著者は教えてくれました。

あらかじめ人間のバイアスを理解した上で、賢く振る舞うことの重要性を今回のGPIF関連報道は教えてくれているように感じました。 

 

 注)クイズの答えは、C 80%