みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです。
実際に定年退職した人の心配ごとのトップは、お金ではなく健康だそうです。
健康保険は、本人や家族が、ケガや病気をしたときに必要な医療費や手当金等を支給して、生活上の不安を少しでもなくすことを目的とした制度です。
定年後は職場が世話をしてくれないので、加入する保険制度を自分で考えて選ぶ必要があります。
選択肢は4つありますが、自分の状況を考え最もお得なものを選びましょう。
+++もくじ+++
1.会社を退職した後の健康保険
だれでも歳を重ねると医療のお世話になる機会は増えてきます。
日本は、世界に誇れる国民皆保険制度を実現しており、国民は何らかの健康保険に入ることになっています。
しかし健康保険加入に要する年間経費は、ゼロから最大で100万円近くまで大きく差があります。
お金に関する知識が、定年後の支出に直結するケースです。
自分の置かれた条件をよく見定めて賢く行動する必要があります。
なお、75歳からは各種保険に入っていた場合でも、後期高齢者医療制度に移行するので、退職後の健康保険問題は退職直後から74歳までの問題であることは覚えておいたらいいでしょう。
2.健康保険の選択肢は4つ
(1)働き続けるなら会社の保険で
最近では定年になっても、働き続ける方が多いです。
現在の会社の嘱託や別会社で働く場合には、本人の意思にかかわらずだれもがその会社の健康保険に加入することになっています。
働く人の健康保険では、実際の保険料をあなたと雇用主で折半します。
すなわち本来の保険料の半額という割安な負担で健康保険を続けられるので、安心感があります。
この場合は他に選択肢がないので、職場にお任せして手続きしても問題はないでしょう。
(2)条件が合えば家族の扶養へ
家族がサラリーマンや公務員の場合は、その人の健康保険に被扶養者として入るのが、もっとも安く健康保険を維持できるベストな方法です。
被扶養者として健康保険の給付を受けるためには、健康保険の被扶養者として認定される必要があります。
もし条件が合致して被扶養者に認定されれば、保険料を払う必要がありません。
そのためには、法律等で決まっている一定の条件を満たすことが必要で、その基準は会社の扶養手当の対象や税法上の扶養家族とは異なります。
三親等内の親族であること、被保険者の収入によって生活していること、収入が一定以下であることが必要ですが、一番の問題は収入です。
収入の条件は年齢により異なり、多くの定年退職者が当てはまるであろう、60歳以上の場合の収入限度額は年間180万円です。
定年退職後に雇用保険の失業等給付(いわゆる失業保険)をもらう場合、金額によって認定の可否が分かれるので注意が必要です。
(3)現在の健康保険を任意継続
定年退職前に働いていた会社の健康保険は、退職後2週間以内に手続きすれば2年間継続でき、今までと同じ給付内容が続きます。
ただし、これまで保険料は雇用主と折半で負担していたものが全額自己負担になります。
最高限度額があるので単純に2倍になるわけではないのですが、損をしないためには後述のように国民健康保険としっかり比較する必要があります。
なお、期間の途中で国保加入や家族の扶養に加入するという理由で任意継続保険を喪失することはできないのが原則です。
また2年経過後は、国民健康保険に加入することになりますが、2年間の間に前年の所得が落ちているでしょうから、前年所得をベースにする国保保険料も低額になるでしょう。
(4)国民健康保険へ加入
会社の健康保険に入らず、扶養にもならず、任意継続もしないとなると国民健康保険が最後の選択肢です。
国民健康保険のややこしいのは、運営者が自治体なので市町村ごとに保険料の計算が異なることと、所得が低くなれば軽減を受けることができることです。
退職直後にいきなり国民健康保険に入ると、保険料が高額になることが多いです。
これは、退職直前の収入をもとに保険料を計算するからで、しばらく任意継続など別の制度に加入しておき、その間に収入が下がると後日、国民健康保険に入っても保険料は多額にななりません。
3.比較すべきは任意継続と国民健康保険
自己負担のない家族の扶養、選択肢のない仕事先の保険は比較の必要はありません。
大きく損得が分かれるのは任意継続と国民健康保険で、退職前の所得が比較する場合のポイントです。
国民健康保険料は、前年の所得により算定されることから、無職になってもしばらくは任意継続のほうが有利な場合も多いです。
ちょっとややこしいですが、会社の健康保険を任意継続した場合と、国民健康保険へ新たに加入する場合の保険料を比較し、負担が軽い方を選択するのが保険料を安く抑える鉄則です。
(1)任意継続の保険料の決まり方
協会けんぽの任意継続被保険者の標準報酬月額は、健康保険法により
①資格を喪失した時の標準報酬月額
②全ての協会けんぽの被保険者の平均的な標準報酬月額(2019年4月から30万円)
のどちらか少ない額になります。
健康保険の保険料のもとになる、保険料率は都道府県ごとに異なりますが、標準報酬月額30万円だと全額負担で3万円程度になります。
ただし、会社の健康保険が協会けんぽでない場合には、②の金額が30万円より多額になる事が多いので確認が必要です。
(2)国民健康保険の保険料
国民健康保険料の計算は、自治体ごとに差がありますが、基本的には世帯の総所得をもとに各種の料率や金額を組み合わせて決まります。
詳しくは市町村に問い合わせる必要がありますが、最近ではホームページ上で情報を提供している例が多いです。
検索サイトで「自治体名 国民健康保険料」で検索してみてください。
一例ですが、わたしの住んでいる神戸市では「国民健康保険料計算シート」というエクセルの表が提供されており、自分で計算できるようになっています。
なお、国民健康保険には扶養者という概念がなく加入者一人ひとりが保険料を払います。
したがって、共稼ぎ夫婦が同時に定年になったような場合、国民健康保険料がかなりの高額になる場合があります。
(3)組合健保は保障が手厚い
企業に務める人が加入する健康保険は、組合健保と協会けんぽに別れます。
自分の保険証を見てください。保険者名称の欄をみて、「〇〇組合」となっていれば組合健保、「全国健康保険協会〇〇支部」となっておれば協会けんぽです。
組合健保も協会けんぽも医療費の窓口負担3割という原則は同じですが、大企業に多い組合健保ではプラスαの付加給付を始めとして保障が手厚いのが特徴です。
任意継続できる期間は原則2年間ですが、一部の組合健保では特例退職被保険者制度といって、75歳まで加入できる場合もあるので調べてみましょう。
国民健康保険と組合健保の任意継続を比較して、差が大きくなければ組合健保の任意継続は魅力的です。
4.失業手当受給中の健康保険
雇用保険の失業給付を受けている場合、健康保険の被扶養者になれるかどうかは、その収入によります。
雇用保険の失業給付を受けていても、基本手当日額が60歳以上で5,000円未満の場合、年間に換算すると180万円未満の収入となり、被扶養者になることが出来ます。
なお、所定給付日数が1年に満たないため、基本手当日額がオーバーしても、受給総額では年間180万円未満となる場合がありますが、認定時の基本手当日額が60歳以上で5,000円以上の場合には、失業給付の受給期間中は被扶養者となることは出来ません。
まとめ
任意継続は、退職日の翌日から20日以内に手続きをする必要があり、じっくり迷っている時間はありません。
できれば退職以前に早めに比較計算をして、どうするか予め決めておくのが良いでしょう。
健康保険はもとより、税金から退職金の運用まで退職後は会社は面倒を見てくれません。
お金の知識がないと損をする事例は、健康保険に限らず枚挙に暇がありません。
ぜひ退職前には、じっくりお金の勉強をすることをおすすめします。