みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです。
年金改革で議論のあった「在職老齢年金制度」の見直しが、決着をしたようです。
不公平だという批判はありますが、60から64歳の世代の厚生年金受給者はこれまでに比べて有利なお得世代になる可能性が高くなりました。
子供や孫世代のことを考えると、ちょっぴり後ろめたい気もしますが、できたルールはルールなので、その中で最適なライフプランを設計するのが賢いやり方です。
制度の歪みがもたらす幸運のことを、黄金の羽根と呼びますが、該当する世代の人達はちょっとの知識があれば、百万円以上の黄金の羽根を拾えるかもしれません。
+++もくじ+++
1. どの年齢が得をするのか
今回記事の対象で最も得をするのは、特別支給の老齢厚生年金を受給できる人、すなわち、
- 男性の場合、昭和36年4月1日以前生まれ。
- 女性の場合、昭和41年4月1日以前生まれ。
で、厚生年金受給資格があり、新制度施行時に65歳未満の人です。
定年前後の男性が多いというこのブログの読者を想定して、ブログタイトルを「60~64歳だけの」としましたが、上記該当の50代の方、特に女性の場合はもちろんお得年齢です。
もっともお得になる期間は、特別支給の老齢厚生年金受給開始から65歳までですが、それ以降もお得度が減るだけで、公的年金をもらいながら働く人は税制などのメリットが続きます。
いつから特別支給の老齢厚生年金受給できるかは年齢によるので、日本年金機構のページを参照してもらいたいのですが、一例をあげれば次のとおりです。
黄色い部分↓が特別支給の老齢厚生年金
これまで働く60~64歳が黄色部分の年金をもらおうとしても、大幅カットされることが多かったのですが、これまでよりも年金減額の対象になりにくくなります。
2. そもそも在職老齢年金制度とは
在職老齢年金制度は、働きながら年金をもらう世代の年金を抑制することで、年金財政を健全化するのが目的の制度です。
「年金」と名前がついているので、お金をもらえると思いきや、もらえると思った年金がカットされる制度です。
収入の多い高齢者に年金の一部を我慢してもらい、将来世代の給付に充てようと言うものです。
これまでは60から64歳の世代であれば給料と厚生年金の合計が月額で28万円を超えれば超えた分の2分の1の年金受給額が減額される仕組みでした。
3. 今回の制度改正の概要
「在職老齢年金」は働く高齢者の年金を減らす制度なので、働いても収入が変わらず、働き損だとして就労意欲をそぐとの批判がありました。
人手不足の中、高齢者にももっと働いてもらおうと、政府は在職老齢年金の制度廃止も含めた見直しを打ち出していました。
しかし、高所得者批判あるいは高齢者への批判などもあり、最終的には65歳以上は現状のままとなり、60から64歳の減額を始める基準を28万円から47万円に引き上げることで決着しました。
この47万円というのは毎月もらう給料と厚生年金の月額を合わせた金額です。
この金額が47万円を超えると2万円増えるごとに1万円減るという形で厚生年金の減額があります。
これまで28万円が基準であった時は、厚生年金をもらう人のうち比較的高額の給料を貰う人は、ほとんどの場合「年金が減額される」か「もらえない」という形になっていました。
これからは、基準が上がることによって、かなりの人たちが厚生年金と給与の両方をもらうことができます。
<計算例 1> 63歳、定年後嘱託で働きながら特別支給の厚生年金を受給
給与 18万円
厚生年金 10万円 →合計28万なのでこれまででも厚生年金満額支給
給与 23万円
厚生年金 10万円 →合計33万、28万円との差の半額の厚生年金カット
手取り (33-28)/2+28=30.5万円
今後は上記の場合でも、厚生年金満額支給で手取り33万円で1万5千円増
<計算例 2>
給料28万円+年金22万円=50万円の場合
■これまで
28万円を超えるので年金11万円減額で39万円■これから
47万円を超える3万円の1/2のみ減額で48万5千円なんと毎月95,000円増額です、これが63歳から2年続けば228万円もお得です。
4. 給料+年金は、税金もお得
給料と年金をもらうメリットは、単に手取り金額が増えるだけではありません。
日本の税制では給料についてはそれの必要経費に当たるような給与所得控除という制度がありますが、公的年金については手厚い公的年金等控除があり高齢者の税金を軽減しています。
公的年金等控除は高齢者しか受けられないのですが、給与収入も得ている高齢者は、公的年金等控除と給与所得控除をダブルで受けられることになっておりとても有利です。
その結果、例えば厚生年金と給料と合わせて50万円もらう人と、給料だけで50万円もらう人では所得税の額が大きく違うという形になります。
5. 働き方の工夫でさらにお得
さらに老齢厚生年金の計算に用いる合算は給与と厚生年金のみです。
業務委託の形で働く個人事業主はもちろん、資産運用での所得や、サラリーマン大家などでは、年金減額の対象になりません。
定年後の働き方では、工夫次第で短時間でもフルタイムと遜色のない手取りを実現できるかもしれません。
たとえば、厚生年金の加入要件が、勤務が一般社員の4分の3(=75%)ある従業員ということなので、週5日勤務を週3日勤務(=60%)にすれば厚生年金を支払わずに済んで結果的に手取り額を増額できます。
6. これからのお得な働き方
現在60から64歳の人たちは、65歳になるまでは厚生年金と給料の両方をもらうのが額面から見ても、税金から見てもお得となる黄金の羽根を拾える世代です。
この年代であればもらえる厚生年金の報酬比例部分の額については、ほぼ正確に把握できると思います。
それをもとに自分の働く時間と金額を調整し、最小限の働きで最大限の収入を得る方法を考えましょう。
そして余った時間を余暇に当て、体が元気なうちは充実した定年後ライフを満喫してみてはいかがでしょうか。