みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです。
最近、影響力のあるブロガーの人たちが相次いで資産運用の本を出しました。
いつも定年退職世代の視点でブログを書いていますが、このような本を読むにつれ、資産運用などお金についてのポリシーというか着眼点が、若い現役世代の人と、定年退職世代では根本的に違ってくることが気がつきました。
定年退職世代は、現役のように収入を増やし資産運用でもリターンを求める考え方から、税金の節税や、医療・介護サービスの上手な受け方、資産とストックの使い分けまで、総合戦略でお金に向き合う考え方に転換する必要があります。
ちょっとの知識があれば、無駄なお金を払わない定年退職ライフを楽しめます。
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投資ブロガー本には利益相反なし
お金の専門家といえば、ファイナンシャルプランナーです。
多くの方がお金に関する本を書いたり、講演会をしたり、はたまた個人相談会などで活躍されています。
この方たちは、お金に関して高度な知識はお持ちなのですが、必ずしもあなたに最良のアドバイスをくれるとは限りません。
それはそのファイナンシャルプランナーの人件費がどこから出ているか考えればよくわかります。
金融機関に所属するファイナンシャルプランナーは、あなたに親切にするだけではなく、その金融機関の収益に貢献する、すなわち手数料が高い商品を顧客に売るのがお仕事です。
誰もが金融機関に関係のない独立系のファイナンシャルプランナーに相談できればいいですが、費用もかかるしなかなかそんな機会はありません。
そんな中でブロガーさんの登場です。
インターネット上では、多くのブロガーさんが活躍されています。もちろん玉石混交ですが、フォロワー数などで信用できるかどうかはすぐわかります。
ブロガーさんの情報発信の目的はいろいろですが、基本的に記事を読んでもらうのが目的で、金融商品の販売が目的ではありません。
すわなちあなたとは利益相反がありません。
わたしも多くの投資ブロガーさんの、ブログで勉強させていただいてますが、皆さん本当に博識でよく勉強されています。
そんな中、最近影響力のあるブロガーの人たちが相次いで資産運用の本を出されました。
一つは水瀬ケンイチさんの「お金は寝かせて増やしなさい」です。
金融庁のおすすめ本にも選ばれるなど、非常に多くの方に読まれる本でした。
インデックス投資について詳しく書かれており下落相場への対処方法なども詳しく、非常に参考になる本です。
もう一つは、ブロガーでアーリーリタイヤを果たされているNightWalkerさんの「世界一ラクなお金の増やし方 ?#インデックス投資はじめました」です。
水瀬さんと同様インデックス投資の重要性を強調されていますが、それとともに資産運用が人生の分岐点で非常に役に立ったという、誰もが憧れる経済的自立ができていた時にどうなるかというリアルなお話を書いておられます。
資産形成期のお金の考え方
上記2冊は、つみたて投資を勧めるなど、資産形成期の読者を主なターゲットにされているように思います。
言うまでもなく若い時代というのはお金がそれほどありません。
一方で、これからしないといけないことは、結婚・子育て・家の購入など、やることがたくさんありそれぞれに不確実性が大きいです。
また、会社での将来も不確実で、出世・転勤・リストラなど何があるかわかりません。
反面、定年まで時間もたくさんあるので、できるだけ低コストで分散された金融商品で複利の力を生かして資産形成するというのが大きな目標になるでしょう。
また下落相場で大きな損失を出した時も、若い人であれば平均への回帰の力、あるいは自分の稼ぎでリカバリーし資産運用を継続できます。
従って債権のポジションを持たないなど、大きなリスクを取るのもありだと思います。
定年退職後は考えをスイッチ
一方で定年退職後はかなり景色が違います
ほとんどの方が、子育てや住宅ローンはほとんど片付いているようです。
サラリーマンの人たちであれば、ある程度の年金収入が見込めますし、退職金も入ってきます。
そうなると資産運用についての着眼点もかなり変わってきます。
生きたお金を使って自分が亡くなるまでの時間を、どう有効に使うかというのが重要なポイントになってきます。
例えば、定年退職後は、加齢に伴い各種の医療や介護などの給付を受けることが増えてきます。
資産運用の際には、その収益の受け取り方法により社会保険料が上がったり、各種判定で不利になったりすることがあるのを多くの人は気がついていません。
資産運用の際には、「特定口座・源泉徴収あり」を活用することで、社会保険料が上がるのを防ぐことができる、などというのが定年退職後のちょっとしたお金の知識です。
時にはセオリーに逆らい取崩し
多くの資産運用本では、定年退職後は資産の取り崩しを定率でするべきと書いてあります。
私の考えでは少し違っていまして、定額で少しずつ取り崩していけばいいと思っています。
その方がマーケットの上下で一喜一憂することもなく、毎月の家計の管理も安定します。
誰もが資産の残高を見ているので、何年か経って金融資産の減り方が大きい時はさらに取崩金額を減らせばいいだけです。
若い頃のように必ずしも金融のセオリー通りではない、自分の肉体的・精神的負担を減らすことを目的とした、お金の複合戦略によって定年退職後の資産運用を考えるのが良いでしょう。
定年後のお金は総力戦
金融機関があおる「長生きリスク」というのも確かにあるのですが、年金は終身もらえます。
厚生年金だけで、生きていくだけの最低限は確保できている人が大半だと思います。
あとはゆとりや楽しみのための上乗せですが、それが必要な期間は長くありません。
人は終末が近くなってくると、ほとんどの人がテレビの前に座っているだけで、それほどお金を使う気にもなりません。
実際のところ、お金を使うのにもエネルギーがいるのです。
お金を使っての日々の人生充実を考えても、男性71.19歳・女性74.21歳という健康寿命を考えれば、定年退職後のわずか10-15年だけが生きたお金を使える時期です。
医療や介護にもは、もちろんお金がかかりますが、所得の低い人についてはかなり手厚い措置があります。
若い時は、ひとつのものを手に入れるとき、金持ちも所得の低い人も同じ値段を支払います。
ですが高齢者になると医療や介護の値段はその人のフローの所得に左右されます。
例えば医療で、病院にかかると窓口で支払うのは3割だったことはよく覚えておられるでしょう。
高齢になれば現役世代よりも軽い一割の窓口負担で医療が受けれるのが原則です。
75歳以上の方は1割なんですが、現役並み所得者は3割負担と3倍も負担が大きいです。
現役並みと言っても実はそんなに高くなく、現状386万円程度ですが、今後は政府の都合でその水準はいかようにでも変更されます。
通常のモノやサービスの値段では、人によって価格が3倍になるなんて考えられませんし、あったとすればボッタクリの世界です。
しかし高齢者まわりでは、一物多価はよくあることなのです。
一例ですが、株式の譲渡益が出た際に、税の申告方法により納税額が変わります。
「特定口座・源泉徴収あり」を活用していれば通常は確定申告不要です。
しかし、複数の金融機関の損益を通算することで税金支払を減らせる場合があり、還付を受けるためには、確定申告することが必要です。
税金の還付に着目して確定申告してしまうと、申告不要のままでいれば知らせなくてよかった所得を、市町村などの自治体に知らせてしまうことになります。
それにより、国民健康保険や後期高齢者医療保険など社会保険料が上がってしまうことはほとんど知られておらず注意が必要です。
若い時は基本的には税金を少なく払うことよりも、収入を上げることに注目が集まります。
ところが定年退職後は、まだまだ働いている人は多いとはいえ収入はそれほどありません。
むしろ上手に資産を生かし、払う税金や社会保険料を減らすことを考えた方がいいでしょう。
資産運用は特定口座(源泉徴収あり)
「特定口座・源泉徴収あり」では、どんなに売却益が多くても合計所得金額に含めません。
ただし、複数の証券会社の特定口座の損益を通算して税の還付を受けるためなどで所得税の確定申告をすると合計所得金額に含まれてしまうので注意が必要です。
医療や福祉は、ある日突然その必要に迫られます。
計画的に所得をコントロールして、社会保険料を抑えるのは難しく、安全策として多少の税金には目をつぶって、「特定口座・源泉徴収あり」を常に活用することをおすすめします。
まとめ
わたし自身、定年退職したあともまだ働いてはいますが、それと同時にブログも副業ということで税務署に開業届を出しています。
税金の損益通算の仕組みを使って本業にかかる税金を減らせることを少しは期待をしているところです。
若い時は「苦労を買ってでもしろ」と言われましたが、定年退職世代は「お金を払ってでも苦労を遠ざけたい」ものです。
高齢になってくると、税金や各種医療福祉制度と上手に付き合うことが重要になってきます。
お金の知識があれば無駄な出費をしなくて済みます。
ただこれは総合的な知識が必要で、医療・年金・資産運用など個別のものを見ているとわかりません。
自分で勉強して幅広いお金の知識を持ち、賢いシニアライフを送っていきましょう。