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やってはいけない不動産投資(藤田知也,朝日新書)【シニアFPの書評】

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みなさんこんにちは

安井宏@定年退職FPです。

退職金を元手にして、アパート経営やマンション経営などの不動産投資を始める人もいるともいますが、投資をする前にぜひ読んでほしい1冊をご紹介します。

藤田知也著 やってはいけない不動産投資 (朝日新書)は、不動産投資に潜む闇をあぶり出した1冊で、不動産投資をこれから始める人がリスクを回避するための知識が詰まっています。

老後のお金が気がかりで、投資や資産運用といったものに少しでも興味があるのであれば、次はアナタが狙われる番かもしれません。

 

+++もくじ+++

 

 

1.著者 藤田知也さんについて

藤田知也さんは、朝日新聞でシェアハウス投資・スルガ銀行不正融資問題を取材する敏腕経済記者です。

スルガ銀行に始まる不動産投資の不正に関する記事を次々と手がけて、不動産投資ブームに冷や水を浴びせて来たのが藤田記者です。

その藤田記者が、膨大な取材をもとに文字数を気にすることなくリアルな不動産投資の現場を本にしたのが本書です。 

 

2.本の内容紹介

地獄の入り口は「将来不安」、この文言から始まり本書では、つぎつぎと信じられないような事例を紹介しています。 

なお、これ以降の引用はすべて本文からです。

◆不動産業者とそこで働く従業員たち

彼らが住むのは「弱肉強食」の世界。学歴など関係ない。中卒も高卒も同じ土俵で競い、大卒の社員を押しのけていく。(中略)物件がさばけると、新築ワンルーム1室で100万円、1億円の1棟物件なら数百万円のボーナスがもらえる反面、売れない月日が続くと給料を削られ、猛烈な罵りを浴びせまくられる。 

物件を売りつけて契約をもぎ取ることが何より優先される。

 これが著者の見る収益不動産業界の世界観です。

やったモン勝ちの不正業者は高卒でも年収3000万円、エリートをハメて田舎のボロ物件で4000万円荒稼ぎ、まさに弱肉強食の世界です。

 

◆社長が夜逃げしたあと、病院のハンコが複数見つかった赤坂のU社

社長はなんと忽然と姿を消した。営業部長、営業課長、営業社員の3人も郵便ポストに退職届を放り込んで出社しなくなった。(中略)続々と出てきたのが、銀行から融資を引き出すために書類を改ざんしていた不正の証拠だ。

(中略)精巧に作られた病院のハンコも複数種類が見つかった。実在する病院のハンコを注文してつくり、健康診断書まで偽造していたのだ。客を団体信用保険に加入させるのが目的で、高すぎた血圧の数値を低く改ざんして基準内に収める例があった。

融資を引き出すためなら、書類の偽造など日常茶飯事という、悪徳不動産業者の行状をリアルに紹介しています。 

 

◆刑事告訴しないことと引き換えに何でも話す大阪のブローカー

本業でも客から預かったお金を使い込んだトラブルを発端に、客の預金通帳などを勝手に改ざんして銀行に提出していたことまでバレた。刑事告訴しないことと引き換えに、やぶれかぶれに何でも話してくれる、と客側から紹介された。(中略)銀行にあえて高額の物件価格を伝え、本来の物件価格を上回る融資額を引き出すという「二重契約」スキームだ。スルガ銀の融資審査も、昔はふつうの銀行と変わらなかったよ。(中略)それがだんだん手間を省くようになっていって、審査がユルユルになったんだ。

スルガ銀行をめぐる事件が、不動産業者とスルガ銀行がグルになっていたことを赤裸々に語る。

 

◆スルガ銀行行員に斡旋してもらった偽造業者

偽造作業に苦労していると、別の行員がある社名を教えてくれた。その会社は、通帳コピーの偽造をお金で請け負う会社だった!

スルガ銀行員が、1口座10万円で偽造してくれる業者を紹介し、不動産業者が困ったときに共犯となり助けていた実態を暴露

 

◆巧妙な偽造業者

スルガ銀行で不正融資ができなくなったあとも、三井住友銀行やりそな銀行、西武信用金庫、千葉銀行などに偽造した資料を提出し、多額の融資を引き出す不正を続けていた。

スルガ銀行のみならず、千葉銀行なども騙していたという楽待セミナー業者のW社。偽造後の残高を「編集資産」と呼び、リアル提出資産と分けて管理。エビデンス編集に矛盾はないかチェックシートで確認する丁寧な仕事ぶりだったとのこと。

 

◆モラル最低の不動産業者

他の業者が不正をやっているという証拠を集めて提供したら、ウチの話は抑えてもらえませんか。入手できそうなあてはあるんですよ

W社の社長に取材すると、他業者を「売る」から見逃してもらえないかといいだす、完ぺきなまでのモラルの低さ

 

◆餌食になるのは断れない客

最初っから『断れない客』を狙うんすよ。独身で、気が弱そうで、東証1部の会社の工場とかで働いていて、コミュニケーション能力が低そうなヤツなんかいたらサイコーっすよ

銀行に出すレントロールは偽装するけど、客に出すレントロールは偽装しないという、即決営業マンのR氏。
断われない客に売るから利回りとか別に関係ないと言い切る大胆さ。

 

3.それでも不動産投資をしようとする人へのアドバイス

筆者はもちろん不動産取引の専門家ではないですが、取材を通して気付いた点として、次のとおりアドバイスしています。

冷静に見ると当たり前のことですが、多数の被害者を見てきた著者の言葉だけに重みがあります。

 

業者の手口に学ぶ「不動産投資4カ条」

  1. 自分の目と足で見極めろ
  2. コストとリスクをぜんぶ洗い出せ
  3. 迷ったら必ず引き返せ
  4. 身の丈に合った投資をせよ

 

4.本を読んで感じた感想

わたし自身も不動産投資をしていた時期があり、不動産業者の契約優先主義が極端だとは思っていました。

ニュースでスルガ銀行や「かぼちゃの馬車」問題が報じられたとき、ここまで極端だったのかとびっくりしましたが、この本を読んで詳細を知り改めて驚きました。

不動産投資は、インフレに強く安定した収入が得られるというのは本当ですが、そこに仲介する不動産業者が、情報の非対称性を悪用していてはとても収益は得られません。

もしあなたが不動産投資をこれから始める人だった場合、「おやめなさい」とは決して言いません。

投資にはリスクが伴うのは当たり前です。ただ十分な知識を得てからやるのと、そうでないのでは結果は大違いです。

不動産の場合は、投資金額が半端なく大きいので、数十万円を学習にかけても十分ペイすると思います。

不動産投資スクール

 

5.まとめ

わたしも久しぶりに一気読みした一冊でした。 

この本を読んで、不動産業者の実態と手口を知れば、業者にカモられて身を滅ぼすリスクを、多少なりとも小さくする事ができるでしょう。

スルガ銀行問題などのニュースで被害者を見たとき、自業自得と思いませんでしたか?

この本では素人だけでなく、生命保険の営業マンのようなプロもダマされる実態を紹介しています。

あまりに巧みな交渉術で闇に引きずりこまれた投資家は、被害者であったというのがよくわかります。