みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです。
最近、近所のスーパーに行ってびっくりしたことがあります。
それはレジなのですが、そこにいる店員の人にかごに入った商品を渡して、商品をスキャンしてもらうところまではこれまで通りです。
私はキャッシュレス派なので、クレジットカードを渡して瞬時に支払いは終わります。
ところが他の人を見ていると結構現金支払いが多いのです。
現金支払いになると、もうその店員の人は相手にしてくれません。
現金支払いの人は、写真のような支払いレジに移動を指示され、時間をかけて自分でゆっくり払うことになります。
しかもレジの数より支払い機の数が多い、つまりは現金でもたもたする人は自分でゆっくりやりなさいということです。
優しく誘導しているように見えますが、実は現金支払者に自分で操作するというペナルティをつけていることです。
これからキャッシュレスの社会が進むにつれ、現金以外のキャッシレス決済にお得感を出すと同時に、現金利用者に対する「ペナルティ」が見えないように始まると思います。
今日、その始まりを見た気がしました。
+++もくじ+++
すでに始まっている現金いじめ
冒頭に書いた、スーパーのレジだけでなく現金が不利になる時代は始まっています。
現金利用者が「得しない」事態はすでに起きていますが、これからますます加速するでしょう。
イニエスタなどスター選手の加入で大人気のサッカーチーム、J1ヴィッセル神戸の本拠地ノエビアスタジム神戸や、楽天イーグルスの本拠地である楽天生命パーク宮城での決済は、完全にキャッシュレスになりました。
老若男女が集まるスポーツ観戦でも、現金だと楽しむことができない時代が現実になっています。
高速道路では、ETCカードがクレジットカードと紐付いて決済を行うシステムになっており、現金利用者は料金所でわざわざ一旦停止が必要なうえ、ETC割引の恩恵もなく割高な料金を払う必要があります。
神戸から東京を普通車で休日に走行した場合
ETC利用 8,550円
現金支払 11,120円
銀行も手間のかかる現金の取り扱いは、減らしたいと考えています。
りそな銀行がでは、2019年7月から銀行の窓口で硬貨を預け入れると硬貨入金整理手数料という名前の手数料を徴収することを公表しています。
家に多数の硬貨を貯め込む高齢者が、銀行に持っていけばんとかなるだろうと思うと、手数料を取られる時代になっています。
コンビニなどでは、人手不足に対応して無人店舗の実験が始まっていますが、いずれもキャッシュレス決済が前提です。
パナソニックとファミリーマートが横浜に開店した店舗では、人の顔や店の商品を高精度なカメラで識別し、無人レジでキャッシュレス決済する仕組みとのことです。
政府はキャッシュレスに本気
経済産業省が、2018年4月に策定した「キャッシュレス・ビジョン」によれば、2015年時点の日本のキャッシュレス決済比率は18.4%で韓国の89.1%、中国の60.0%、アメリカの45.0%と比較して大きく遅れています。
このため今後は、大阪・関西万博(2025年)に向けて、キャッシュレス決済比率40%の目標を前倒しし、将来的には、世界最高水準の80%を目指していくとしています。
出典:経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」
政府の誘導策に乗るのがお得
政府はキャッシュレス推進のために様々な対策を打ち出し、これに呼応した企業の動きも広がっています。
ここは素直に、政府の政策を利用して、お得な生活を満喫するべきでしょう。
① 消費税対策の還元
眼の前に迫った消費税の引き上げに対応し、①消費を落ち込ませないため、②キャッシュレス比率引き上げのため、キャッシレス決済でのポイント還元策を打ち出しています。
具体的には、クレジットカードやQRコード、電子マネーなどでキャッシュレス決済をした消費者に、中小の飲食店や小売店で5%、フランチャイズ店では2%をポイント還元するものです。
10月1日から2020年6月末まで9ヶ月実施されますが、最大5%の還元は税率の引き上げ分を超えており、利用すれば実質減税になります。
日常の消費が対象になることで、キャッシュレス決済を「する・しない」で生活費に差が出ることになります。
② QRコードの覇権争いに便乗
次の時代のキャッシュレス決済の主流になると見込まれるQRコード決済について、各社が競い合い、シェアを取るためにポイントのバラマキやくじ引きなど、多額の費用をかけています。
PayPayが、支払額の2割還元という100億円バラマキのキャンペーンをやってニュースになったのは記憶に新しいと思います。
LINE Payや楽天Pay、その他多くのQRコード決済もPayPayに負けじと2割近い還元額のキャンペーンをしています。
これは、QRコードが普及しても、生き残るのは1-2社と見込まれるため、なんとか自分のところの普及率をあげようと各社が懸命になっているからです。
会社同士がガチンコで競争してくれれば、私たち消費者にとっては恩恵が増えることになるので大歓迎、ちょっと知識のある消費者にとってはバラ色の事態です。
③ クレジットカードでもポイント競争
これまでもクレジットカードのポイント競争は何回となく繰り広げられてきましたが、その率は0.5%から2.0%程度のものでした。
ここに来て、クレジットカード発行最大手の三井住友カードが2019年3月から、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンで利用するとポイント5倍になる「いつもの利用でポイント5倍!」を開始しました。
QRコード決済の競争に刺激されただけでなく、先行するJCBへの対抗のようですが、消費税増税後のキャッシュレス還元に備え、クレジットカードでも熾烈な競争が始まったようです。
主なキャッシュレス手段
① クレジットカード
キャッシュレス決済手段で一番普及しているのはクレジットカードです。
多くの方が「少額決済でクレジットカードを使うのに抵抗がある」と考えているようですが、実はお店の方は手間のかからないキャッシュレス決済は大歓迎なのです。
わたしはコンビニで、おにぎり一つ買うのでもクレジットカードを使っています。
JCBが、全国の一般消費者を対象に「クレジットカードに関する総合調査」を行っていますが、2018年度の結果では、「飲食店」「コンビニエンスストア」など日常的な利用が増加しているということです。
コンビニエンスストアでクレジットカード支払いをした比率は、3年間で11.6%から16.0%と顕著に伸びています。
② QRコード決済
スマートフォンのアプリを使った決済で、毎月のように、あらたな企業が参入する激戦地帯です。
現状ではソフトバンク系のPayPay、スマホのコミュニケーションを変えたLINEが展開するLINEPay、独自のポイントで楽天経済圏を築いた楽天グループの楽天Payがリードしています。
しかし、新規参入も次々とあり、ポイント還元競争には目が離せない状況です。
消費者としては、アプリを入れるだけなので身近に使える機会のあるものは、スマホにインストールしておくのがいいでしょう。
わたしは自宅周辺のコンビニでよく使うので、PayPay・LINE Pay・楽天Payの3種をインストールしています。
なお、楽天Payなら楽天カードのように、系列のカードを使うとさらにオトクな場合が多いようです。
③ 電子マネー
Suica、WAONに楽天Edyといった電子マネーなどですが、最近はあまり勢いがありません。
タッチひとつで支払いが可能な電子マネーには、プラスチックカードにICが組込まれたICカードタイプと、ケータイ・スマホタイプがあります。
すばやく決済できることから駅の売店、コンビニの支払いに電子マネーを使う人が多い印象です。
電子マネーの中でも、交通手段になっているSuicaは抜群の普及率を誇りますが「お得か」という観点で見ると、あまり魅力がありません。
わたしも交通手段としてSuica利用者ではありますが、支払いではあまり使わないようにしています。
④ デビットカード
銀行口座と連動し即座に引き落とされるデビットカードは、口座に入っている金額の範囲でしか利用できず、現金決済に慣れた日本人に使いやすいと期待されて登場しました。
しかし、あまり普及していないのが現状です。
多様な決済が登場してきた今日、今後どのように展開していくか、しばらく様子見です。
現金がお店で嫌われるようになった理由
これまで飲食店などでは、客がクレジットカードで支払うと、クレジットカード会社に数%の手数料を支払う必要があることから、「お支払いは現金のみ」のお店が多く見られました。
客側も「お店には現金のほうが歓迎される」と思い込まされてきましたが、ここに来て流れが変わっています。
① 現金管理コストが高い
現金の場合、管理コストが無視できないほど大きく、最近の人手不足の中で経営者を苦しませています。
例えば、現金では開店前に予め釣り銭を用意するなどの手間がかかり、閉店後の精算に時間(人件費)がかかります。
② 省力化ができない
レジでの支払いに時間がかかるほか、無人店舗に対応できないなど、とにかく人手がかかります。
冒頭に述べた、スーパーでの支払いなどでも、現金支払い専用機械をいれてますが、できればキャッシュレス支払いにしてほしいというのが、今の経営側の本音です。
③ 盗難のリスクが高い
閉店後に店内に現金を置いておくと、盗難などのリスクがあります。
大型の金庫を備えたり、閉店後に銀行の夜間窓口で入金する必要があるなど、取扱に手間がかかります。
近い将来ますます現金は不利になる
① ますます減少する銀行窓口
現金での支払いでは、どうしても銀行との行き来が多くなります。
給料や年金の引き出しだけでなく、1円玉など家に溜まった小銭をまとめて銀行口座に入金する人は多いでしょう。
コンビニなどATM備え付けの店はありますが、小銭が扱えなかったり「月に3回まで」といった利用回数の制限があったりして不便です。
② 現金が利用できない施設やお店が増加
前述のサッカーのスタジアムはじめ、キャッシュレスオンリーの施設やお店は今後どんどん増えてきます。
キャッシュレス先進国の北欧スウェーデンでは、銀行ですら現金を置いておらず、銀行強盗が激減したという話もあります。
③ 現金主義は信用されない
クレジットカードを持つことは、金融事故を起こしていない証明になります。
キャッシュレス社会が進むと、クレジットカードがないと家を借りにくくなったり、高額の保証金を要求されたりします。
近年AI(人工知能)の進展で、購買入歴などで「個々人の信用力」を数値化する「信用スコア」が注目されています。
企業では、これに基づいて融資の金利を決めたり、優遇サービスを提供したりする動きが始めってますが、現金利用者はそもそも対象にすらなりません。
また、政府の進めるキャッシュレスの隠れた狙いは、不透明な現金取引や脱税をなくすことです。
経営者が現金取引にこだわっていると、脱税をしている可能性が高いと税務署から目をつけられたり、金融機関からの融資が不利になる未来はもうすぐそこまで来ています。
まとめ
キャッシレス社会は、もうすぐそこまでやってきています。
特に、消費税値上げのキャッシュレス還元はインパクトが大きく、連日テレビなどで取り上げられるのは間違いないでしょう。
そうなってから慌てるのではなく、早めに準備するのが肝心です。
ちょっとの勇気で第一歩を踏み出し、「お得な生活」を満喫しましょう。