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【書評】定年後のお金 寿命までに資産切れにならない方法 (野尻哲史著:講談社+α新書)

みなさんこんにちは

安井宏@定年退職FPです

フィデリティ退職・投資教育研究所の所長である野尻哲史さんの「定年後のお金 寿命までに資産切れにならない方法 (講談社+α新書) 」を読みました。

私はブロガーとして定年退職世代に意見を発信している関係上、高コストの金融商品を売りつける金融機関に属している人たちにかなり批判的です。

今回読んだこの本は、危機感を煽って高コスト商品を売る金融機関の商法とは一線を画し、間もなく定年退職するご自身の視点を交え、老後難民にならないために50代60代にできることを具体的に書いてあり、とても参考になりました。

 

+++もくじ+++

 



本書の構成

本書の目次です。

はじめに 「老後難民」にならないために50代、60代にできること

序章  引き出し方がわかればお金の寿命は延ばせる

第1章  逆算の資産準備があなたを救う

第2章  退職後に必要な生活資金を計算してみよう

第3章  退職後の生活費をいかに減らすか

第4章  退職後生活は「使いながら運用」で決まる

第5章  定率引き出しのすすめ:4%引き出し

第6章  退職後の資産運用のすすめ:3%運用

おわりに 運用も引き出しも「時間をかける」こと

 前半で、退職後のお金の準備の大切さを紹介し、後半ではその具体的アクションプランとして、3%で運用しながら4%ずつ引き出すことを提唱するのが全体像です。 

定年後のお金 寿命までに資産切れにならない方法 (講談社+α新書)

定年後のお金 寿命までに資産切れにならない方法 (講談社+α新書)

 

 

著者(野尻哲史氏)について

著者の野尻氏は大変有名な方なので、ご存知のかたも多いと思います。

金融機関に長くお勤めで、現在はフィデリティ退職・投資教育研究所の所長として、様々な著書を書かれるとともに、いろいろな場所で講演活動をされておられます。
講演というと、第3者として客観的にものを見ることを想定させますが、野尻さんご自身も間もなく定年退職ということで、ご自身の退職後生活も念頭に、主観の混じった文章になっており、本に説得力を加えています。

 

退職後のお金の考え方

野尻さんが所長を務める、フィデリティ退職・投資教育研究所では様々なアンケート調査を実施されています。

退職金を受け取った退職者へのアンケートでは、退職金を受け取っているにもかかわらず、「金銭面で不安がある」と回答する方が過半数に達したとのこと。

そこで、序章と第1章では退職後のお金の準備の考え方を紹介しています。

人はだれでも現役でバリバリ働き続けることはできません。いずれ収入から資産を積み上げることができなくなり、それを取り崩すステージに入ります。

資産の面からみて下り坂に差し掛かったら、できることは、「①引き出す金額を少なくする」か、「②引き出しながらも残りを運用することで差し引きの資産減少のスピードを緩くし、資産をより長持ちさせる」ことに尽きます。

本書では、後者の方法を具体的に述べています

結論を先に言うと、60歳からの15~20年間、75~80歳になるまでのあいだ、「運用は3%」「引き出しは4%」と考えることで、資産の寿命をかなり延ばすことができるようになります。

「この資金で死ぬまで大丈夫だろうか」という心配は、すべての人に共通の不安なのです。

自分の寿命よりも資産の寿命のほうが短かった時、そこから先は公的年金だけの生活になります。

自分の寿命と資産の寿命の競争なのですから、ただ減らせばいいというわけではありません。

どうやって「自分よりも資産のほうを長生きさせるかを考える資産活用方法」が求められており、それが「運用は3%」「引き出しは4%」なのです。

退職後の生活費

第2章と第3章では、退職後の生活費について考察しています。

退職後は再雇用などがあるにしろ、勤労収入はかつてに比べ激減し、年金で足りない分を「資産から引き出さなければならない」という形に変わることです。

勤労収入の中で支出を考えてきた現役時代と違って、退職後は支出が先にあって、年金で不足する分を資産から引き出すという主従逆転の形になります(下図)。

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 フィデリティ退職・投資教育研究所で退職準備に関するたくさんのアンケート調査を行ってきた中で、明らかになった事実がひとつあるそうです。

それは、「年収の高い人ほどより多くの退職後の生活資金が必要だと考えている」ということです。

この数値の持つ意味は、「退職後の生活は現役時代最後の生活水準に規定される」という考え方です。そう、それぞれの人生がある中で、退職後の生活資金も一律で議論するのは正しくないということです。

2017年8月の「資産活用世代のお金との向き合い方」のアンケート調査では、「65歳以降335万円の〈退職後年収〉が必要だが、公的年金は200万円程度しかない」ということがわかってきました。

そこで生活費低減のために、著者が勧めるのは地方都市への移住です。

特に住みやすいのは人口50万人都市です。これくらいの規模ですと医療サービスなどをはじめ、生活の利便性が保たれるからです。単なる田舎へ移住するというわけではありません。

これは退職後の生活コストを大きく減少させることのできる方法として、退職したら別な街に引っ越す──これは、米国でよく言われる「退職したらリタイアメント・コミュニティへ移住する」のと同じようなものです。

米国でリタイアメント・コミュニティへの移住は「お金持ちのする行動」だとされていますが、日本では工夫をすることで、お金持ちの行動ではなく、「お金を節約する行動」として多くの人が使える方法にできると思います。

資産運用と引き出しは両立

第4章と第5章では、この本のメインの主張とも言える引き出しながら運用することを紹介しています。

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 65歳をすぎると、収入の大半が年金になり、金融資産取り崩しの必要性が増してきます。

少しでも資産の寿命を延ばすためには「運用」を続ける必要があります。すなわち、「使いながら運用する」時代を自分の人生設計の中に組み込むのです。

資産形成時は、時間をかけてつみたてなどを行いますが、投資から撤退する時も一度に売却することを考えずに、時間をかけてコツコツと撤退するのです。

引き出しは現実の生活のためですが、その方法として将来の生活にも目を向けた引き出し方法が大切で、その典型的な方法として「定率引き出し」を提唱しているのです。

そう、本書の特色の一つは定年後にお金の引き出し方について焦点を当てたことでしょう。

今後の世代では老後の生活は年金がメインになるのは変わりませんが、現役時代に貯めた金融資産や退職金を少しずつ取り崩しながら生活をするのは常識です。

そして運用と取り崩しを組み合わせることで、その資産の寿命が全然違ってきます

本書では、3%で運用し、4%引き出すことを提唱しています

なお、今回は書評なので深くは触れませんが、わたし自身は定率引き出しのメリットは十分わかった上で、老後の心の安定といった別の側面、高尚に言うなら行動経済学的考察から、定額引き出しも悪くないと思っています

興味のある方は、下記をご覧ください。 

www.teinen-wakuwaku.com

 

定年後世代向けの本が少ない中で貴重

本屋に行けば資産運用の本が多数揃っていますが、資産運用に関する本は、ほとんどが若い世代が金融資産をいかに積み上げるかというものです。

今回のように老後世代がお金を取り崩しながら生活する方法書いている本は貴重です。

別記事でご紹介した、老後貧乏にならないためのお金の法則(田村正之著)が、教科書的であるのに対し、本書は後半人生を俯瞰したものになっています。

これは、おそらくご自身が間もなく定年退職を迎える状況で、95歳を人生の終焉として生活設計をする『人生設計100年時代』を考えなければならない」という著者の想いが詰まっているからではないでしょうか。

「決して第三者的な立場での解説書ではなく、実際に自分自身がやろうとしていもがいていることを話してきました」という著者の姿勢がこの本の魅力を倍増しているように思えます。

金融庁が、ファイナンシャルジェントロジーに目を向けたこのタイミングで発行されたこの本で、一人でも多くの定年退職者が幸せになってもらいたいものです。

 

まとめ

野尻さんが強調している「時間をかけること」は、定年退職世代が一番気をつけるべきでしょう。 

退職金をもらってすぐに、金融機関の無料相談や無料セミナーに出向いてはいけません。

定年後の時間のゆとりを使って、じっくり勉強してから資産運用を始めるのが望ましいでしょう。

この本は、著者の本業である「お金」中心に考えていて、完成形とも言える本になってますが、一方でお金が重要とはいえ、生きがい・仲間・健康など気にしないといけないことも多いのが定年後の生活です。

この本を参考に、お金の寿命を伸ばして不安のない退職後生活を実現すると同時に、60歳前後の元気な時代には、精一杯ワクワクするような定年退職ライフを送ってもらいたいものです。

 

www.teinen-wakuwaku.com 

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