みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです。
私は VT がとても好きです。
VT は低コストインデックスファンドで有名なバンガード社が作った、全世界に分散投資するETF です。
米国籍のETFですが日本の証券会社で誰でも買えるもので、私のリスク資産の大半は VTになってます。
なぜそうなのか、その理由をお話ししましょう。
+++もくじ+++
VTの概要
まず VT とは何者?
VTの正式名称はバンガード・トータル・ワールド・ストックETFで、世界市場全体への分散投資をこれ一本で実現できるETFです。
ETFは、証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託で、「Exchange Traded Funds」の頭文字をとりETFと呼ばれています。
ETFは一般的に、通常の投資信託と比べて販売会社に支払う手数料がない分、信託報酬が低く投資家に有利です。
VTは、アメリカの証券取引所(NYSE Arca)に上場されており、商品識別に使うティッカー・シンボルが「VT」であるため、多くの人がVTと呼んでいます。
米国を含む全世界の先進国と新興国の株式市場へ投資するもので、約47ヵ国の約8,000銘柄で構成し、全世界の投資可能な市場時価総額の98%以上をカバーしています。
ベンチマークのFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスは、全世界の大型、中型、小型株の市場パフォーマンスを対象にしています。
本家の米国では、S&P500など米国中心の商品の売れ行きの方が良く、米国より日本のインデックス投資家に人気が高い商品です。
その理由は、米国市場だけで世界の株式市場を代表できると考える米国の投資家と、日本を含め幅広く投資したい日本の投資家の好みの違いのようです。
トータルリターン
運用成績であるトータルリターンは、直近では大きな変動はあるものの5年、あるいは設定来という中長期では6%前後と安定して優秀な成績を残しています。
出典:バンガード社資料
構成銘柄など
保有上位銘柄としては、アップル、マイクロソフト、アマゾンなどが並びます。
市場構成比としても、米国市場が5割を占めるほか、日本、英国など全世界に分散しています。
出典:バンガード社資料
派生商品の楽天VT
2017年に発売された投資信託の楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天VT)は、派生商品とも言うべきものです。
設定から日は浅いものの好調に売れているようです。
こちらは、積み立て投資では使いにくいETFの欠点を改善して使い勝手を良くしたものですが、その分コストもかさみます。
1本で世界に分散投資できるという特色そのままに、使い勝手がいいということで評価できる商品です。
詳しくはこちら>>> 定年退職者の視点で楽天 VT を考える
投資ブロガーに人気の定番商品
投信ブロガーの人たちの意見や知識はプロも顔負けで、最近では政策決定をする金融庁や、投資信託を運用する会社でもブロガーの意見を参考にするようになってます。
そんなブロガーのイベント「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」でVTは過去2009年、2012年、2013年のFund of the Yearの一位に輝いてます。
また、2017年には派生商品である楽天VTが1位になっています。
わたしも投資ブロガーなので「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」に投票しましたが、もちろん投票先はVTでした。
2018年のファンドオブザイヤー結果では、つみたてNISAを意識したファンドが上位を占め、VTは7位でしたがそれでも根強い人気を持っています。
定年退職者にとってのVTの魅力
定年退職者が投資する商品として、VTは優れた魅力を持っています。
世界分散投資が簡単にできる
市場の平均を取りに行くインデックス投資の有効性は広く知られてますが、時価総額加重平均で世界市場の株式を丸ごと保有するのが基本的なセオリーです。
現在は米国株が人気ですが、以前には新興国株がもてはやされたことを忘れてはいけません。
「今までアメリカ市場はが右肩上がりだったから、今後も同じく右肩上がりになる」と考えるのは危険です。
どの地域の株が上がるかというのを「事前に」知ることはできません。
そうであれば、日本や米国だけでなく、その他の先進国や新興国に幅広く分散して投資するのが王道と言えるでしょう。
圧倒的に低コスト、コスト逓減
指数に連動するインデックス投資では、運用成績に差が出ないため確実に運用成績を下げるコストが極めて重要です。
バンガードETFの経費率はこれまでも継続的に低下してきており、直近では0.09%と驚異的な低コストとなっています。
これは純資産額が増加するにつれて、信託報酬で儲けを出さなくても貸株金利で利益が取れることによります。
これまでも毎年のように信託報酬引き下げが実施されていることから、今後さらに低くなることも期待されます。
VTは、100円から購入可能な投資信託と違い、1株1万円弱の単位での取引になります。
投資ロットが大きいことに加え、米国株なので購入時に為替手数料と株式売買手数料がかかる手数料も高いという点が欠点です。
しかし、定年退職者が退職金などある程度まとまった金額を運用するには、むしろこちらの方が良いでしょう。
100円から積み立てができる投資信託は、積み立てで資産形成する若い人に人気ですが、その小口積立に伴う頻繁な取引コストなどは、結局は大口で長期保有している人が負担していることを忘れてはいけません。
自分自身が長期保有していても、頻繁に取引する別の顧客のためにファンド自体が売買を繰り返していると、結局コスト高になってしまいます。
ETF であれば買うとき売るときに手数料はかかりますが、そのぶんコストが明白で隠れコストがないので、定年退職者などの投資に向いています。
繰上償還の心配がまず無い
退職金などで、安定して長期投資をしようというときに問題になるのが 繰上償還をされてしまうということです。
運用残高が小さいことを理由に繰上償還される投資信託は、実はかなりあります。
繰り上げ償還されてしまうと、継続的な投資が途切れるほか、その時点で税金も確定するなどパフォーマンスが下がります。
投資信託やETFを購入する際には、残高の規模とそれが増加傾向にあるかどうかを確認することが大切です。
VTは2008年6月に設定された歴史あるETFで、ファンド純資産総額も160億米ドルと巨大です。
最近発売されたファンドのように、繰り上げ償還を懸念する必要はないでしょう。
自動で地域のリバランス
世界の株式市場に投資すると言っても、今後どこの市場が伸びていくかを事前に予想するのは困難です。
最近は、米国市場は長期に渡って好調であるため、投資は米国株だけで十分という意見も散見されます。
しかし、新興国市場に成長性のポテンシャルがあることは間違いなく、組入が必要です。
VTも、今は米国市場の時価総額が大きいので米国市場の割合が5割と必然的に多くなっています。
今後、他の市場(新興国だったり・他の先進国だったり)が伸びてくれば、割合は自動的に変化していきます。
全世界への投資で 「日本+日本以外の先進国株+新興国株」のように世界市場を分割して購入することで、徹底的にコストを下げるマニアックな方法も提唱されていますが、VTの良いところは自分でリバランスする必要がないことです。
定期預金を上回る年4回の配当金
VTでは年4回定期的に配当金が支払われます。
資産形成期の若い人たちの間では、配当金を再投資をする手間がかかるということがVTなど米国籍ETFの欠点と言われています。
しかし、定年退職者にとっては配当があるのはありがたいことです。
定年退職になると年金だけでは生活費が足らず、蓄えた金融資産を取り崩しながら生活をすることになります。
そんなとき定期的に配当金が入ってくるので、それを再投資せずに活用することができます。
配当は、時期により増減しますがこれまでのところ利回りにして2%程度です。
これだけでも低金利に苦しむ日本人から見たら非常に優秀な金融商品と言えるでしょう。
ネット証券で簡単に購入可能
米国籍のETFですが、日本のネット証券会社で誰でも簡単に購入できます。
ただ、「投資家に有利な商品=手数料ビジネスをする金融機関のうま味の少ない商品」ということで、金融機関の窓口では絶対に勧められることはないので、自分で購入しましょう。
円をドルに換え、ドル建てで買い付ける必要がありますが、今のネット証券ではどこでも簡単にできます。
定年退職者から見たVTのデメリット
VTにも、もちろん欠点はあります。
一般にVTの欠点と言われているのは、取引ボリュームが大きいこと、配当が出るので再投資の手間がかかること、配当に米国と日本で2重課税されるので、これを取り戻すため確定申告が必要の3つです。
定年退職者にとって、前の2点は一般にはデメリットでも、定年退職者には問題がないのは前述したとおりです。
よって、定年退職者から見た唯一の欠点は、配当が出れば米国で課税され、さらに日本でも課税される2重課税の問題があることだけです。
外国税額控除の制度があるので、配当に係る外国税の部分は取り戻すことができますが、外国税額控除の利用には確定申告の手続きが必要で、これが面倒くさいのが最大のデメリットでしょう。
まとめ
VT は究極のほったらかし投資ができる ETF で、とりわけ定年退職者にはお勧めです。
退職金をもらって、どの商品を買ったらわからない人に最も勧められる商品だと思います。
ただし、VTも中身はあくまで株式なので世界の株式市場の動向により価格は上下します。
自分がどの程度までリスクを取れるかよく考え、個人向け国債10年ものなど、値動きの小さいものと組み合わせ、安定的な資産運用をすることが重要です。
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