みなさんこんにちは
安井宏@定年退職 FPです
最近ニュースなどで在職老齢年金の廃止が話題になっています。
別名「年金カット制度」とも言われ、高齢者が働く意欲をなくしてしまう悪い制度だと思っていますが、いよいよ政府も廃止に動きはじめました。
具体的には私たち定年退職世代にとって、どんな得や損があるのか解説します。
結論を先に言えば、ちょっと損をするかもしれないが「働き損にはならないので、働き続けるのが吉」
また、まもなく制度廃止になりそうなので「うまく間に合えば大変オトク」です。
+++もくじ+++
在職老齢年金とは
名前に似合わず年金カットの制度
在職老齢年金という名前を聞いて、想像するのは仕事をしながらも、更に年金がもらえるいい制度のように思います。
しかしながら実際のところは反対で、60歳以降も厚生年金に加入して働きながら年金をもらうと、本来もらえる年金が一部カットされてしまうという、名前とは反対のむしろ損をする制度です。
現役世代とのバランスから、一定の賃金を有する高齢者については給付を制限すべきというのがこの制度の理由です。
これは、厚生年金の制度の一部なので、厚生年金に加入して働く場合だけ問題になります。
国民年金に含まれる老齢基礎年金は無関係です。
65歳前後で取扱が変わる
給与と厚生年金の月額の合計が一定金額を超えたら、超過分の厚生年金が一部カットされるのですが、年齢により基準が変わります。
65歳より若い人たちが年金をもらいながら働き、厚生年金の額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超えると、金額に応じて在職老齢年金の減額などの調整が開始されます。
総報酬月額相当額とは「当該月の標準報酬月額+当該月以前1年間の標準賞与額÷12」です。
65歳以上の場合は、厚生年金の額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超えると、金額に応じて在職老齢年金の減額などの調整が開始されます。
65歳以上ではボーダーが47万円なので、厚生年金をカットをされるのは、かなりの高所得の人、あるいは年金の非常に多い人だけとなります。
自分の場合を詳しく計算したい場合には、日本年金機構のホームページに詳しい計算方法が紹介されています。
将来はなくなる期限限定制度
現在、年金制度は過渡期で、将来的には65歳から年金支給されるのが原則になります。
しかしながらかつて60歳であった年金支給開始年齢を徐々に徐々に引き上げて65歳に持っていくため、経過措置として厚生年金の一部を受け取れる制度が設けられています。
例えば、昭和32年4月2日から昭和34年4月1日までに生まれた男性と、昭和37年4月2日から昭和39年4月1日までに生まれた女性は、63歳から厚生年金の一部(報酬比例部分)を特別支給という名前で受け取れます。
しかしながら、これは将来的に徐々に引き上げられるため、やがて特別支給の年金をもらう人がいなくなり、この在職老齢年金制度もなくなってしまいます。
働く意欲を削ぐ在職老齢年金
在職老齢年金の支給停止
在職中に受ける老齢厚生年金(在職老齢年金)については、年金をもらいながら働く人から年金を減らすのは当然だという考えがあります。
一方で、現在のように働き手がない社会環境の中で、あるいは政府が70歳まで働くのは当然だという雰囲気を作ろうとしてる中で、働けば本来もらえる年金がカットされるというのは働く意欲を減退させるというのは当然です。
これについてはいくつかの研究をされていますが、その学術的な研究の成果でも少なくとも65歳以下の人で年金カットされるというのは、働く意欲を減退させているということが厚生労働省の資料でも紹介されています。
年金カットでも働き続ければ報われる
それでは在職老齢年金があるので、カットされる手前で仕事を辞めるのが正解かというと必ずしもそうではありません。
確かに年金のカットはありますが、トータルの金額で言えば働けば働くほど収入が増えます。
また厚生年金に入りながら働くということは、将来の年金受給額が増えるということにもなりますので、体が元気であれば長く働く方が有利です。
ちょっと損をしたような気分にはなりますが、短気を起こさず働き続けましょう。
定年前後世代は動向に注目
現在定年退職の前後の世代は、自分の老後生活を支える年金制度の動きに、ぜひ注目していただきたいと思います。
年金カットされない働き方に注意
在職老齢年金は厚生年金の制度なので、定年退職をした後、定年延長や再雇用、嘱託などの厚生年金に加入する雇用形態で働くと年金カットの対象になります。
一方で会社から業務請負で働いたり、起業して厚生年金の制度のない個人事業主として働くなどであればこの年金のカットは適用されません。
週刊誌などを見ていると「年金をカットされない働き方」として、業務請負をすすめる専門家がいます。
しかし、業務請負と雇用では仕事の安定性も違いますし、年金のカット幅だけで判断せず、総合的に考えることが大切です。
在職老齢年金制度廃止に動く政府
政府は今年6月、在職老齢年金制度「将来廃止も展望」と骨太方針に明記し、この在職老齢年金制度を将来的に廃止すると表明しました。
具体的には法案を出したり様々な手続きがあるため、いつからということは明言されていませんが、現在定年退職の前後にある世代にとっては有利になる可能性が大きいでしょう。
在職老齢年金の廃止によって、60歳以降の人の労働収入が増えれば、その人たちが厚生年金保険料を支払うことになります。
また所得税もたくさん払うことになり、国にとっては年金財政と税制の両面でメリットがあるのが廃止の背景にあるようです。
実際にどういう風になるのか、日々のニュースに注目することが必要です。
年金財政の検証にも注意
厚生年金などについて超長期の財政状況を5年に1度、検証することになっており、今年はこの年金財政の健康診断とも言われる財政検証の年です。
財政検証の年には今後の年金財政がどうなるかという数字が出てくるもこともあって、年金の制度を色々変更するということになります。
在職老齢年金制度の制度変更だけではなく、様々な制限なども出てくる可能性がありこちらの方についても注意しておきましょう。
定年退職世代に直接影響しそうなこととしては、公的年金等控除の廃止や縮小の動きが出てくると予想しています。
まとめ
ここまで述べたように、在職老齢年金は年金をもらいながら働けば一定以上の収入があればカットされてしまうという制度で、一見すると非常に損をするような制度に思います。
しかしながら働けば働くほど減るわけではなく、働けばもらえる年金は少し減りますがトータルの収入は増えます。
さらに将来的に受け取る年金金額も増えることから、過度に気にせず働けばいいと思います。
また政府の制度廃止の動きがうまく新たに間に合えば、年金カットされる以上にお得なシニアライフを過ごすことができるかもしれません。
定年前の現役時代は、会社任せで過ごされたみなさんも、定年を気に年金のもらい方や、医療介護などの社会保障を少し学んで見ればいいでしょう。
定年後は、お金の知識があるかないかで、大きく生活の質が変わります。