みなさんこんにちわ
安井宏@定年退職FPです
国の財政の黒字化目標が再び5年間先送りされました。
政府は閣議決定された「骨太の方針2018」の中で、新たな財政健全化計画が公表され、基礎的財政収支の黒字化する目標を25年度に先送りしました。
黒字化といってもあくまで基礎的財政収支だけなので、本当の意味で国の財政が黒字化するのは遥か先ということになります。
基礎的財政収支(プライマリー・バランス)とは、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけまかなえているかを示す指標です。
これを黒字化するのは財政再建の一里塚ではありますが、これが黒字になったからといって1000兆円にのぼる国の借金がそのまま残るという現実は変わりません。
それでは定年退職世代の人達にはどういう影響があるのでしょうか。
自分はもう定年退職世代だから逃げ切れるという甘い認識ではなく、来るかもしれない X デー(財政破綻)にどう備えればよいか考えてみましょう。
+++目次+++
その1 金融知識を身につける
日銀が刷っている日本の紙幣、これに価値があるのはみんながそれに価値があると 認めているからです。
かつてのように金(ゴールド)が価値を担保しているわけではありません。
したがってみんながある日、円を信用しなくなった瞬間にハイパーインフレが襲ってきます。
仮想通貨だと例えばビットコインであれば発行の上限が決まっているので、インフレにはならないのですが、日本円の場合は信用をなくして暴落、すなわちハイパーインフレということもあります。
日本の国債は一番信用できる債権であることは間違いないと思いますし、個人が現実的に買える金融商品の中で一番安全でインフレにも比較的強いのが10年物個人向け国債という私の意見は変わりません。
しかしながらハイパーインフレが絶対来ないというわけではありません、最低限の備えをしないといけないと思います。
ハイパーインフレが襲ってくると言ってもある日突然襲ってくるというよりは、何らかの予兆があります。
金融の知識があればその先に起こることを予想して早め早めに行動することができます。
例えば銀行の預金閉鎖などは金曜日に発表されることがあります。
土日に作業をするということで金曜日の銀行の閉店時間の以降にとんでもない政策が発表される恐れがあるというような例を知っていれば早めに行動ができます。
お金の知識を持ち、歴史を勉強し自分の身を守ることを考えましょう。
その2 外貨に分散して持つ
一般的に言って日本円だけに金融資産が偏るのが問題です。
みなさんの金融資産はどのような通貨で構成されていますでしょうか。
日本円だけで持つというのは グローバルな資産の中で日本円に偏ったポジションを置いているということです。
みなさんの金融資産は、いま銀行や証券会社にある金額だけではありません。
実はみなさんの大きな金融資産は、これから死ぬまで貰える年金です。
年金は日本円でもらうことを忘れてはいけません。
いつ死ぬかわからないので、その金額ははっきりとは言えませんが数千万円になる可能性が大きいです。
仮の計算ですが、2018年現在の年金支給額の最新情報は、国民年金支給額の平均が55,464円、厚生年金支給額の平均が147,927円となってます。
ざっと月額20万円として、65歳から85歳まで30年受給すると、7,200万円にもなります。これすべて日本円でもらいます。
そうです、実はみなさんが金融資産の中で日本円を持っているのに加えて、将来の年金という形でさらにたくさんの日本円を持っているのです。
それが分かればみなさんの手元にある、退職金その他についてドルや仮想通貨などに分散して持っておくのが賢明だということが納得していただけると思います。
その3 財政破綻した国の末路を学んでおく
グローバルに考えると、実は財政破綻する国というのは、これまでもたくさんありました。
その歴史を少し勉強すれば、万一の X デーのあと日本がどうなるかが、ある程度予想できます。
アルゼンチンは財政破綻の常習犯であまりにも有名ですが、アジア通貨危機の際のインドネシアや韓国。
欧州財政危機の際のギリシャやアイルランドのような例は多くにあります
現在では産油国であるにもかかわらずハイパーインフレが止まらないベネズエラなどがあるでしょう。
いずれもIMF の支援や通貨安に伴う経済の回復などで、長い目で見れば復興をしていますがその過程で多くの犠牲を払っており、多くは病人や年金生活者など弱い立場の人達が犠牲になっています。
日本の場合財政破綻をしてしまうと何が起こるか、どう対処するかということを考えるうえで、タイムリーな本が出版されました。
本屋に行けば、財政破綻を煽るようなトンデモ本が並んでいますが、それとは全く違う真面目に経済学者が検討した結果を集大成した良書です。
小林慶一郎慶應義塾大学経済学部教授を著者・編集者とし、小黒一正法政大学教授、左三川郁子日経センター主任研究員らの経済・財政・社会保障の専門家が執筆した、「財政破綻後 危機のシナリオ分析」がその本です。
このなかでは、日本の債務はついに1,000兆円の大台を突破したとして、いまや財政破綻は「起きるか、起きないか」ではなく、「起きたらどうなるのか」「どう危機をしのぐのか」を考えるべき時に来ているとしています。
また、実際に財政破綻が起こった国にも言及し、
財政破綻が起きれば公費の流れが止まり社会保障制度の資金繰りが窮地に陥る。
国民は年金給付がストップ削減されても貯金を取り崩すことである程度対応可能である。
しかし医療・介護・福祉サービスの提供体制が崩壊すれば、即座に生命の危険や生活の質低下に直面する。
として、
ギリシャでは財政破綻により最も大きな影響を受けたのは医療分野である。
とか、
1991年にソ連が崩壊した際、透析医療がストップしたため2ヶ月で人工透析患者のほとんどが死亡した。
などとショッキングな例が紹介されています。
少し分厚い本ですが真剣に読んでみるに値する良書だと思います。
まとめ
繰り返しますが、定年退職世代も財政破綻の危機の前には逃げ切り世代ではありません、むしろ最も被害を受ける世代です。
対応策としては基本的に日本円にだけに偏らない資産運用をするということです。
民間企業と違い、国財政破綻は国がなくなったり精算されたりするわけではありません。
企業で言うところの企業再生にあたるもので、数年間耐えることができれば再び明るい生活が待っています。
その意味では、お金を外貨などに分散して持って備えるだけではなく、何かがあった時でも自分らしく生きていくんだという、前向きな気持ちが実は X デーに備える一番大切なものかもしれません。
あってはならないX デーですが、その備えだけはしておきたいものです。