みなさんこんにちわ
安井宏@定年退職FPです。
退職者のための「お金の10回講座」第1回では、「定年退職者が狙われていることを知るべし」ということで、具体的な資産運用を始める前に、まず自分の立ち位置をはっきりさせることが大切というお話をしました。
みなさんは、最近食料品などがじわじわ値上がりしていることにお気づきでしょうか。
第2回の今回は、今後の人生ではインフレに備える必要があるということで、そのためには最低限の資産運用をする必要があることをお話します。
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物価上昇:複利の力は怖い
今まで日本はデフレと言われてきました。黒田日銀総裁は2%の物価目標を達成するぞと勢いよく「黒田バズーカ」を打ち上げましたが、なかなか日本の物価は上がりません。
とはいえ、今後は徐々にインフレになるというのが、当ブログの読みです。
それが当たるかどうかはともかく、現状の低い物価上昇でも複利の力で長期には大きな影響力を持ちます。
総務省が公表している消費者物価で、2018年6月は0.7%です。
一方、いま銀行に預金してもほとんど利息はつきません。定期預金で0.01%なのでほとんど誤差ですね。
説明を簡単にするため、物価上昇率マイナス定期預金利息を、1%と仮定して考えましょう。
退職金など1,000万円もらった方が、1年間定期預金をしておいておくと1年後には、額面ではほんの僅かに定期預金利息の分だけ増えるとはいえ、実際のお金の価値は1%だけ下がります。
退職金時の1000万円が、1年で 1000万円✕99%=990万円(実質額)と目減りします。
誤解のないように言いますが、額面じゃないですよ。お金の購買力、どれだけ物を買えるかの力が1%減ってしまいます。
ご理解いただけてるでしょうか。
怖いのはここからで、利が利を生む複利の力は物価上昇でもマイナスの大きな力になります。
2年目は、990万円✕99%=980.1万円
3年目は、980.1万円✕99%=970.3万円 と延々と計算を続けますと、
なんと、30年後には銀行に預けていた退職金が、約740万円にまで減ってしまいます。
60歳で退職して、90歳まで生きるのは珍しくありません。
銀行の定期でおいておくのが不都合なことは、理解いただけたでしょうか。
単に現在の財産を目減りさせまいとするだけでも、少なくともインフレ率と同じだけのリターンを上げ続けなくてはならないことを忘れないでほしい。
デフレは終わり今後はインフレへ
日本がデフレから既に脱却したかどうかは微妙ですが、世界は確実にインフレ方向に進んでおり日本もいずれそうなると思います。
1%の物価上昇でも、銀行定期においておくだけでは目減りします。
ましてや、本格的な物価上昇を迎えると目減りのスピードは加速されるので対策が必要です。
これまで日本ではデフレだったので、変な投資をせずにタンス預金でおいていても問題はありませんでしたが、そろそろ考え方を変える転換期です。
転換期に定年退職を迎え、資産運用をしてみようと当ブログをご覧になっている方は、間に合ってラッキーだと思います。
定年後の資産運用は資産を守ること
この10回講座では資産運用をおすすめしていますが、目的は資産を増やすことではありません。
退職金を含む大切な資産を、インフレから守ると同時に、取り崩しながらもできるだけ長持ちさせることが定年退職世代にとっての資産運用の目的です。
定年退職後は、年金だけでは生活できず、加えて退職金を始めとする金融資産を徐々に取り崩して生活するのが通常です。
定年後の資産運用では、取り崩しで金融資産が無くなる「資産寿命」をできるだけ伸ばすことが重要です。つまり、
金融資産の寿命 > ご本人の寿命
を実現したいものです。
定年後は若い世代と違い大きなリスクを取ることはできません。
ハイリスク・ハイリターンという言葉がありますが、資産を大きく増やそうとすれば大きなリスクを取る必要があり、リーマンショックのような暴落が起きた際には深い傷を負います。
定年後は、インフレに負けない程度の保守的な資産運用がオススメです。
資産運用に拒否感のある方もおられるでしょうが、実はその方も間接的に株式投資などの資産運用をしています。
それは年金の積立金で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という機関が国内外の株式や債券を使って長期視点で資産運用しています。
運用成績などは常時公表されており、マイナスの時期もありましたが、2001年から2017年までの平均で、3.12%の運用成績を上げ、今後の年金支払原資を増やしています。
大切な年金原資なので、比較的保守的に運用されてますが、それでも3%程度の運用成績が残せることはぜひ覚えておいてください。
先にのべた複利の話をすれば、3%で運用すれば1%の物価上昇と差し引いても毎年2%ずつ資産が増える勘定です。複利計算すれば1,000万円が10年後には1,219万円、30年後には1,811万円になる計算です。
資産運用が怖いという気持ちをお持ちの方も多いと思いますが、資産運用は博打ではありません。
ノーベル経済学賞の受賞対象となった理論に裏打ちされているインデックス運用などにより、分散投資をすることで過度にリスクを取らず効率的な資産運用を行うことができます。
定年後はインフレに強い資産を持つ
インフレに強い資産の代表格は、株式と不動産です。
金や、最近では仮想通貨のビットコインなども上限が決まっているのでインフレに強いと言われています。
この講座は定年退職世代対象なので、いざというときにすぐ換金できる流動性や、価格変動が激しすぎないことが重要です。
その観点から株式、それも個別株ではなくまとまって市場の動きに連動して動き、かつコストも安いインデックス投資信託が定年退職世代には一番のおすすめと言えるでしょう。
日本の財政状況にも注視が必要
国や地方の借金は、1100兆円を超えGDPの2倍近くになっています。
これは世界の先進国の中ではダントツに悪く、いつの日か財政破綻する可能性が囁かれています。
最近では、トルコやベネズエラの経済混乱がニュースを賑わしていますが、国がハイパーインフレで破産状態になるなど混乱すると国民は悲惨で、とくに公務員や年金生活者など財政に依存する人たちが大きな被害を受けることが知られています。
年金生活に入ったあなたが生きている間に、日本でも財政破綻とハイパーインフレが来ないとは限りません。
すぐに財政破綻することはないと思いますが、資産運用にあたっては財政破綻のリスクも頭の片隅においておく必要があります。
財政破綻すれば、ハイパーインフレと超円安になることは学者の間でも確実視されており、防衛策としては日本円だけでなく外貨資産を持つことです。
その意味でも、外貨建ても含めた投資信託で運用しておくのが一石二鳥といえます。
まとめ
今回は複利の考え方を紹介しインフレに備えることの重要性をご紹介しました。
そのためにも、大きなリスクを取らない程度の資産運用は必要だということを申し上げました。
今後の講座で、リスクをコントロールしながら資産運用をする方法を学んでいきましょう。
次回は資産運用の基礎知識として、リスクとリターンのお話をします。
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