みなさんこんにちわ
安井宏@定年退職FPです。
退職者のための「お金の10回講座」第7回では、全世界に目を向けて分散投資する商品選択について学びました。
ここまでこの「お金の10回講座」を読んでいただき感謝です。もうすでにみなさんは、初心者を脱して賢い資産運用者になっています。
しかし、思わぬ伏兵が隠れているのを忘れてはいけません。
それが、税金です。
あなたがリスクを負って資産運用した果実を、税務署が虎視眈々と狙っています。
脱税は犯罪です、大過なくサラリーマン生活を終え定年退職したあなたが選ぶ道は、賢く節税することです。
NISAに代表される優遇制度を上手に使うことで、税金と正しく向き合うことができます。
+++もくじ+++
若者世代と定年退職世代の違い
最近は金融庁の頑張りもあって、個人投資家向けの優遇策が充実しつつあります。
「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「つみたてNISA」が優遇策の双璧で、若ければiDeCoとつみたてNISAが鉄板と言っていいでしょう。
特に、iDeCoは課税所得の多いサラリーマンに税制メリットが多い画期的な制度です。
しかし、60歳未満の方が加入対象なので、60歳以降は加入できませんし、まもなく60歳を迎える方にもメリットは少なく加入の手間を掛けるほどのことはありません。
一方、高齢期になると税負担が医療費などとも連動する場面があり、定年退職世代としての税金との付き合いを考える必要があります。
NISA活用法
iDeCo以外の税制優遇で有名なのは、NISAです。
NISAとは、2014年1月にスタートした、少額からの投資を行う方のための非課税制度です。
NISAでは毎年の非課税投資枠が設定され、株式・投資信託等の配当・譲渡益等が非課税となります。
定年退職世代はNISAを上手に使って税金すなわちにコストを減らしましょう。
通常の金融商品であれば利益が出ればその2割を国に持って行かれます、NISAの制度を上手に使うことでこれが回避することができます。
利用者は、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種のNISAのなかから選ぶことになります。
つみたてNISA
つみたてNISAは少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度で、2018年1月からスタートしたばかりです。
非課税投資枠は、毎年40万円が上限で最長20年間非課税期間が続きます。
特徴の一つは、対象となる投資信託を金融庁が選別しており、優良な投資信託でないと対象とならないことです。
一般NISA
一般NISAは、非課税投資枠が毎年120万円で、非課税期間は最長5年間です。
一番最初にできた制度で、対象とする金融商品は幅広いです。
ジュニアNISA
名前からして分かるように19歳までの方が対象で、定年退職世代には縁がないので説明は省略します。
NISAは選択性
定年世代でも利用できる、つみたてNISAと一般NISAはどちらか一方を選択して利用可能なので、どちらを利用するかよく考える必要があります。
定年退職世代は、運用期間も限られていること、退職時が一番金融資産が多いことを考えれば、一般NISAを主に利用することになるでしょう。
退職金など定年後の資産運用では、まず最初にNISA口座で各年満額の120万円まで投資するのが税制上は有利です。
有利な税制を最大限利用するため、NISA口座に入れるのは、資産構成の上でもっとも期待リターンの高いものにしましょう。
ふるさと納税の活用
資産運用から外れますが、税金といえば、忘れてはいけないのはふるさと納税です。
自治体に寄附をした場合には、確定申告を行うことで、自己負担額の2,000円を除いた全額が所得税及び住民税から控除されます。
寄付をすると寄付先の自治体から、肉、コメ、フルーツといった地元産品の返礼品が送られてくるので大変お得です。
豪華すぎる寄付が社会問題になり、総務省の指導で抑制方向ではありますが、おおむね寄付額の3割程度に相当する返礼品が期待できそうです。
仮に、10万円ふるさと納税で寄付して3万円分のコメや牛肉などの返礼品を貰えば、2千円を引いた2万8千円の得をしたことになります。
ただし、全額控除される寄附金額には、収入や家族構成等に応じて一定の上限があります。
さとふる等の「ふるさと納税ポータルサイト」で上限額は簡単にシミュレーションできますので、ご確認ください。
寄付にしても、個別自治体のサイトから探すのは手間なので、ふるさと納税のポータルサイトなどからクレジットカードを使って寄付するのが一般的です。
もちろん、クレジットカードを使って寄付すればカードのポイントも貯まることは言うまでもありません。
定年退職者でなくとも関心のある税制ではありますが、定年後時間に余裕ができた世代ならではの、心の余裕を持って地域の返礼品などを選んでみてはいかがでしょうか。
地域の産品に関心をもつのをきっかけに、旅行などすれば定年後の人生が豊かになります。
また、ふるさと納税は確定申告を勉強する上で格好の材料です。
「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を使うことなく、自分で確定申告してみれば、お金の勉強も出来て一石二鳥です。
医療費控除を上手に利用
定年退職前後になると、誰しも一つや2つ健康診断で引っかかる項目があります。
60代以降は家計に占める医療費の比率がどんどん増えていきます。
医療費が10万円を超えてきたら、必ず確定申告で医療費控除を使いましょう。
ポイントは、自分の医療費だけでなく奥様など世帯全員の医療費を合算して、一番所得の高い人から控除できることです。
なお、医療費控除以外にセルフメディケーション税制というのもできましたが、いずれか一方を選択して適用を受けることになります。
医療費のかかる定年後世代では、医療費控除だけで十分と思います。
源泉徴収有り特定口座がおすすめ
医療費は窓口で3割負担というのに長年慣れ親しんでこられたと思いますが、高齢者になれば所得により自己負担が大きく変わってきます。
定年後生活設計の上で、医療費や介護費対策の視点が欠かせません。
公的医療保険制度などの福祉制度は民間の保険と違い、支払った金額と受けるサービスが釣り合っているわけではありません。
極めてアンバランスな制度ので、その仕組みをよく理解して、適切な医療を出来るだけ負担少なく受けれるように賢く行動することが必要です。
注目すべきポイントは、課税所得です。
医療費の自己負担は課税所得によって左右されるため、金融資産の税金の支払い方法を考えたりすることである程度の対応が可能です。
具体的には、複数の口座を使って株式投資をしている場合で、配当や売却益で利益が出ている口座と売却損が出ている口座がある場合、確定申告をするとそれらの口座を損益通算することができ、利益が出ている口座の税金が戻ってきます。
また、株で多額の売却損が出た場合には、その損と配当を通算することで、配当で源泉徴収された税金を取り戻すことができます。
ところが、定年退職世代では注意が必要です。
ほとんどの地方公共団体が国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療制度保険料の計算や医療費の自己負担割合決定の基準に住民税の所得金額として申告された金額を用いています。
そのため、申告を行ったことにより、これらが増加するケースが考えられます。
特定口座(源泉徴収あり)で取引をしている間は分離課税として所得とは別で納税されるためいくら利益を出しても市町村は知りようがないです。
特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告をした場合や、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で取引をして確定申告をすると所得税の支払いが発生し、それに伴い住民税申告のため税務署から市町村に所得の情報が伝えられます。
これにより医療や介護の自己負担判定で、現役並みに所得が有ると判定されると最悪自己負担が3倍になってしまいます。
確定申告の結果、見込まれる税額上の還付分や減額分よりも、保険料や自己負担の増額分が上回る場合があるので注意が必要です。
これらを防ぐためにも、証券口座は特定口座(源泉徴収あり)にして源泉徴収で課税関係を終了させた方が安心です。
まとめ
金融所得の税率引上げを財務省が検討中と報道されたり、NISAは税制なので政治の思惑でどんどん内容が変わりえます。
米国では老後資金の積み立てのための「個人退職勘定(IRA)」と呼ぶ税優遇付きの口座があります。
政府税調が日本版IRAの創設も視野に、既存制度の整理を進めるとの報道もあり、今後は老後向けの優遇制度もありうるかもしれません。
まずは、ふるさと納税や医療費控除などで、自分で確定申告してみることで税に敏感になり税制改悪で思わぬ損をすることが防げます。
国税庁のホームページは実によく出来ています。
ぜひ一度自分でやってみることをオススメします。
税金に関する制度はとにかく複雑で分かりにくいですが、少しずつ体験して知識を蓄積していくことは、とても大切だと実感しています。
税に限りませんが税制や公的社会保障に関しては、知らないと損をすること、知っていると得をすることが多すぎます。