みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです。
定年退職後にリフォーム/リノベーションする人は多いと思いますが、ちきりんさんの「徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと」は目からウロコの本でした。
わたしのあこがれのブロガーである、ちきりん(@InsideCHIKIRIN)さんが独自の視点で詳しく書かれてます。
この本の肝はリノベーションが「両者で共に創出した価値を分け合う共同プロジェクト型の取引」だというところでした。
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定年退職後のリフォーム/リノベーション
定年退職世代である私の周辺では、リフォーム/リノベーションに関心を持つ人は多く、実際に行った人もいます。
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が、2019年2月に発表した「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する第11回調査報告書」によれば、「いずれリフォームしたい」を含むリフォーム潜在需要は、持ち家居住者ではすべての年代において増加しており、潜在需要が最も高いのは 50 才代で約6割に及ぶとのことです。
著者のちきりんさんは、ご自身のブログ「Chikirinの日記」で、この本が向いている方として、以下の7つをあげておられます。
- リノベに関心のある方、検討中の方
- 新築マンションにするか、中古マンションを買ってリノベしようか迷っている方
- モノが片付かない方、収納に悩んでいる方
- ちきりんスキルの実践編としてのリノベに関心のある方
- ヤジ馬的にちきりんの家をのぞいてみたい方
- 親の家(実家)のリノベに興味がある方
- リノベ業界、不動産業界、住宅機器メーカーなどで働いていらっしゃる方
しかしながら、私はあえて、「定年退職してリフォームを漠然と考えている人」に読んでもらえたらと思います。
定年退職者向けのブログを書いている私が、この本をあえて定年退職者に読んでもらいたいと思うのは、以下の理由です。
- 定年退職者は退職金というお金をもってます
- 業者との交渉や引越しをする気力・体力があります
- 暇な時間がたっぷりあります
- 最近まで第一線で仕事をしてきたので、まだビジネス感覚が残っています
ちきりんさんも「定年して毎日がヒマでしょうがないといった人には、リノベは最適なプロジェクトです」と書かれてますが、定年退職者というのはリフォーム/リノベーションにぴったりな人たちです。
しかし、彼/彼女に一番足りないのは「自分の将来への想像力・問題意識」とともに「リフォーム/リノベーションに対する理解」ということになります。
この「問題意識」や「理解」ということは、いきなりリフォームの本を読んでも得られるものではありません。
それに、そもそも問題意識がなければそんな本を手に取ることもありません。
そんな人にこの本を読んでもらえば、単なる how to ではなく 自分がどんな住み方をしたいのかという将来像と共に、実際にリフォームする時に役に立つ知識の両方が得られると思います。
仮に、ちきりんさんのようなマンション&フルリノベでなくても、十分参考になりますし、最終章の「リノベで「親の家」問題も解決できる」は、少し先の自分であると考えると、リノベを真剣に考えようとなるかもしれません。
いずれにしろ大きなお金をかける買い物なので、事前に十分な知識を得ることの重要性はいうまでもなく、ちきりんさんの今回の本は、その期待に応えるものだと思いました。
本の内容紹介
「完全に「顧客目線」ですべてを解説。リノベーション&リフォーム入門の決定版!」というのが、宣伝文句でした。
著者じゃなく出版社が作った宣伝文句でしょうが、大きくは外れていないものの、本自体は単なるハウツー本でなく、もっとじっくり考えさせられるものでした。
内容は、ぎっしり盛り沢山です。
◆リノベ前に絶対に知っておきたい3つのこと
◆リフォームとリノベ―ションの違いって?
◆リノベ会社の5つのタイプ
◆ワンストップサービスのメリットと注意点
◆マンションならではのリノベの制約とは?
◆平米単価の「ざっくり予算」
◆個別相談のリアルな事例
◆工事とその後のスケジュール
◆現地調査って、なにするの?
◆見積書の見方がわからない!
◆助成金を申請するときの注意点
◆引越より不用品の処分が大変!
◆自宅をリノベ中の住まいはどうする?
◆リノベで「親の家」問題も解決できる
もっとも感動したところ
両者で共に創出した価値を分け合う共同プロジェクト型の取引とは
わたしがこの本の中で、もっともハッとしたことの一つは、リフォーム/リノベーションの性格に対する理解でした。
リフォーム/リノベーションや引越しなど、何かサービスを買おうという時は複数の見積もりをとって、一番安いところと契約をするというのが原則だと思っていました。
しかし、この本を読んでその考え方はちょっと違うということに気づきました。
家を新しくするというのはやってみないとわからないようなところもあり、相談をしながら進めるべきで、完全無欠の完成品を買うのとは根本的に違うというところです。
ちきりんさんは、この共同プロジェクト型の例として医療をあげています。
病気を治そうとする時に、複数の医者を比較して一番安い医者にかかろうという人がいるでしょうか。
それよりも、自分とコミュニケーションをする相性がいい、といったことを重視すると思います。
リフォーム/リノベーションも同じことだということが書かれているのが最大の気づきです。
共同プロジェクトなので、問題が起こるのは当たり前で、それをいかに協力して解決するかが重要とのこと。
この本を読むまでは、全く想定していなかった考え方でした。
予算やスケジュールは客側の事情で決まる
私はリフォーム/リノベーションの予算というのは、お客側が希望を伝えればリノベ会社側で、予算とスケジュールを示してくれるものだとばかり思っていました。
ちきりんさんの本を読んで、客側の価値観やこだわりによって、いかようにでも変わること、すなわち結局のところ予算やスケジュールを決めるのは客側であることがよくわかりました。
見積書の比較は無理
「業者の選定=見積書の比較」と思い込んでいたわたしには意外でしたが、ちきりんさんをもってしても、見積書の比較は不可能ということです。
むしろ「自分たちが今回のリノベにいくら払っていいと考えているのか」が大切であるとのこと。
リノベは「親の家問題」解決に応用できる
リフォーム/リノベーション本体とは少し違いますが、最後の第13章でリノベで親の家問題を解決という章があります。
これは今回ちきりんさんがリノベーションを経験して感じたのが、親の家問題のパワフルな解決策になるということでした。
多くの人が親の家の問題、例えば不用品を捨てるように言っても全く変わらない、何度も言うと喧嘩になる、といった課題に悩まされています。
ちきりんさんによれば、リノベーションを通じて様々経験したことが、親の家問題の解決につながるということでした。
親に「家を片付けないといけない」と小言を言うよりも「リノベーションをして住みやすい家にしたら」と勧めた方が言いいやすいし、聞き入れてもらいやすいということです。
実際にこれができる人は限られているかもしれませんが、親の家に悩む人にとって一つの大きなヒントになるでしょう。
知っててよかった基礎知識
リフォームとリノベーションの違い
明確な定義はないそうですが、DIY→部分リフォーム→フルリフォーム→リノベーションの順で、マンションでスケルトンにしてインフラまで交換すると「新たに生まれ変わる=リノベーション」ということらしいです。
ややこしいので、わたしはこの記事ではリフォーム/リノベーションと記しています。
マンションリノベは万能にあらず
マンションでは、リノベーションといえど何でもできるわけではないのは初めて知りました。
とりわけトイレなど水回りの変更に、強い制約があることを図解で示してもらったのがわかりやすかった。
リノベーションには同意書が必要?
これはびっくりですが、マンションリノベでは近隣住民の書面の同意が必要になる場合があるとのこと。
都会のマンションの場合は、隣の人との交流がないのが普通なので、ちょっとびっくりです。
いざというときに、慌てる人も多いと思うので、あらかじめ知っておくことは重要です。
不要品の処分は予想外に大変
これも意外だったのは、引越し業者に頼めば何でも処分してもらえる、と思っていたのは、そうでないことでした。
その背景も書かれていて納得ではあるのですが、リフォーム/リノベーション関係なしに、不用品処分が課題である定年退職世代には厳しい話でした。
そのほかハウツー満載
単なるハウツー本ではない、ちきりんさんの思考を詰め込んだ本だとはいえ、ハウツー満載です。
具体的にどうやってリノベ会社を探し、どんなプロセスや判断基準で決めればよいか、初めてリノベに取り組む素人には難しいことばかりです。
ちきりんさんが具体的にはどう考え行動したか、詳細に書いてあるのは参考になります。
助成金一覧のような、よくあるものに加え「ピンタレストで好みの写真を集め好みをリノベ会社に伝える」といった、ちょっとしたアイデアもたくさん盛り込まれています。
まとめ
定年退職後に家をリフォーム/リノベーションする人は多いですが、読んでおけば共感できる一冊だと思います。
ちきりんさんならではの、実に細かいところまで利用者の目線で 書かれています。
ここまで詳しく書かれていると、ハウツーではなく真面目にプロジェクトとして捉えないとリフォーム/リノベーションなんかできないってことがよくわかりました。
ちきりんさんも「具体的なプロセスに入る前に、しっかりと時間をかけてリノベで何を実現したいのか考える」ことを勧めておられます。
定年退職者の特権は、十分に考える時間があることです。
リフォーム/リノベーションを、うっすらとでも考えている定年退職者のみなさん、ぜひオススメしたい良書ですよ。