みなさんこんにちは
安井宏@定年退職FPです。
定年後、終活はまだ早いけどちょっと気になる遺産相続の話。
最近、法律が改正され自筆証書遺言の作成が簡単になったという話を聞き、自分でも挑戦してみたところ、費用も格安で簡単でした!
今日は、そんな自筆証書遺言の作り方をご紹介します。
+++もくじ+++
1. 遺言の効能
自分の死後に、遺族がお金を巡って争う、いわゆる争続が多発しています。
芸能人やお金持ちだけの話ではありません。
最高裁判所が出している令和元年度司法統計の遺産額別事件数によれば、相続が裁判所に持ち込まれる事例7,224件のうち、34%は1,000万円以下、1,000-5,000万円が43%で、普通に定年したサラリーマンも無縁ではありません。
これを防ぐ切り札が遺言で、所定の要件はあるものの強力な争続防止ツールです。
2. 遺言の種類と課題
遺言の方式には、
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
の2種類があります。
公正証書遺言は、プロの公証人が関与するので信用力が高く確実です。
弁護士事務所や司法書士、信託銀行などが手掛けてますが、財産額に応じて数十万円レベル以上と費用も高く、心理的なハードルも高いため、利用が進んでいませんでした。
一方の自筆証書遺言は、自分で書けるので手軽に作成し、事情が変われば何度でも気軽にやり直しできるのがメリットです。
しかし、その遺言書は自宅で保管されることが多いことから、相続人による改ざんや、紛失などの問題点があり、結局は紛争に繋がる恐れがありました。
3. 簡単になった自筆証書遺言
自筆証書遺言の普及を図るため、最近2つの重要な改正がなされました。
(1) 法務局での保管制度
自分で書いた自筆証書遺言 を、自宅ではなく法務局で保管できるようになることで、全国どこでもプライバシーを確保した遺言保管ができ、改ざん・紛失等のリスクを防ぐことができるようになりました。
これまで必要だった家庭裁判所での検認も不要となりました。
ただし、保管はしてくれても遺言内容についての審査はしないので、自分の責任で作成する必要があります。
また費用はかかるものの、場合によってはベッドサイドまで来てくれる公正証書遺言とは違い、自分で法務局まで出向く必要があり、心身ともにある程度しっかりしている間しか利用できません。
(2) 財産目録のパソコン作成が可能に
行政のデジタル化の遅れはあちこちで指摘されていますが、遺言はその最たるもので、これまでは遺言本文も、財産目録もすべて自ら手書きすることが必要でした。
それが、財産目録についてはパソコン等で作成できるようになりました。
また預貯金は通帳の写し、不動産は登記事項証明書の添付で済ますこともできるようになり、かなり簡略にできるようになりました。
実務的には、1枚めに手書きで「別紙財産目録1の財産を〇〇に相続させる」と、最低限の記述をし、詳細はパソコンで作成した別紙や、通帳コピー・不動産登記事項証明書にすることで、僅かな手間で遺言作成が可能です。
4. 争続防止だけではない遺言の効能
遺言により、相続を巡って親族が争うのを防ぐ効果を期待しますが、遺言にはそれ以外のメリットがあります。
(1) 遺産分割の事務を簡単にできる。
故人が残した財産を実際に分割して、複数の相続人に配分する作業はかなり大変です。
相続人が遠隔地にいて遺産分割協議が進まないとか、銀行であれこれ書類を要求されて大変だったという話をよく聞くことがあります。
その点、遺言があれば
- 相続人の範囲の調査・確定
- 相続財産の調査・確定
- 相続人全員の話し合い(遺産分割協議)
- 遺産分割協議がまとまらなければ家庭裁判所での調停・審判
を省くことができるし、銀行などでの相続手続きが簡単になります。
しかも、個人の死亡後の諸手続きには期限があります。
個人の準確定申告は4ヶ月以内、相続税の申告は10ヶ月以内など、時間に追われることになるので、遺言による時間の節約効果は、遺族にとってとても助かるものです。
(2) 自分の想いを残せる
遺言では、財産の相続指示以外に付言事項として、残された親族にメッセージを残す機能があります。
これを書くかどうかは任意ですが、
- 家族への感謝の気持ち
- 財産配分の意図や理由
- こだわりのある遺品の処分方法
など、相続人に言いたくても言えなかったことを、最後に伝える貴重な機会として利用することが出来ます。
5. 自分で自筆遺言証書に挑戦
以下は、私自身がやってみてわかった、自筆証書遺言作成の記録です。
(1) 情報収集は法務省ホームページ
自筆証書遺言を作成し、保管してもらうための情報は法務省のホームページにすべてあります。
遺言者の手続き、自筆証書遺言書の様式等の手続きは、これに従ってやるのが間違いがありません。
PDFファイルで、遺言書の様式例なども用意されているので、これを印刷して使用することにしました。
(2) 遺言本文の作成
簡素化されたとはいえ、遺言本文はこれまでどおり、全文、日付及び氏名を自筆して印鑑を押さねばなりません。
紙は法務省の様式を使うにしても、いきなり書き始めるのは厳しいので、パソコンで下書きを作った上で、それを丁寧に書き写す作業を行いました。
(3) 財産目録の作成
私の場合は全財産をリストアップし、Excelで作成しました。
通帳写しの添付などで作成可能ですが、わたしの場合は通帳のないネット銀行やネット証券がメインなので、すべて記載することにしました。
財産目録は何枚になってもいいのですが、各ページに氏名の自署と押印が必要です。
この作業は少し煩雑でしたが、自分の財産を一覧する機会はなかなかないので、残高のほとんどない口座があちこちのあることに気付かされるなど、貴重な機会でした。
(4) 法務局での手続き
自筆証書遺言を保管してもらうための申請には、遺言書の保管申請書が必要ですが、記載事項が結構多いので、事前に自宅で書込み可能なPDF様式をダウンロードし、作成してから持参したほうがいいでしょう。
普通の人には馴染みのない法務局、自筆証書遺言を預かってくれる法務局の部署を「遺言書保管所」と呼び、近くの遺言書保管所の場所はこちらで調べられます。
わたしの場合は、兵庫県川西市在住なので、神戸地方法務局伊丹支所が所管でした。
予約制なので、電話で予約したあと実際に行ってみました。
遺言書保管所といっても、そんな建物があるわけではなく、法務局の一部署で手続きしました。
事前に予約していたおかげで、スムーズに手続きが進みました。
まず最初にマイナンバーカードで本人確認したあと、書類を細かく点検していただきました。
1点だけ申請書のミスが有ったのですが、微修正だけで無事チェック終了。
3,900円分の収入印紙を建物内の別のところで買って、チェックの済んだ申請書に貼って手続きは完了でした。
保管証という保管番号などを書いた紙を受け取り、質問がないか確認されてすべて終了しました。
この間、30分程度で思ったより簡単でした。
6. 作成してみての感想
私自身はまだ63歳ということで、自分が死亡して相続になるということにリアリティはありません。
しかしながら、自分の財産を全てリストアップし、家族の顔を思い浮かべながら遺言書を書くというのは、貴重な体験でした。
遺言書は気が変われば何度でも書き直しが可能です。
こんなに手軽にできるので、それほど深刻に考えずに作成しておけば、万一の時に家族から感謝されるのは間違いないと思います。
まとめ
これまで費用的にもハードルの高かった遺言書作成がこんなに簡単にできるのは驚きでした。
家族思いのあなた!!自分でやれば、わずか3,900円で出来てしまう手軽さです、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。